クレジット制度の構造的危険性とこれに対する現行割賦販売法の不十分性から,クレジット契約に伴う消費者被害が多発している実態に鑑み,次のような割賦販売法の改正および関連制度の改善を求める。
1.不適正与信防止義務の明文化及び民事効果としての抗弁接続の徹底
(1)不適正与信防止義務の明文化
クレジット会社は,クレジット契約の与信対象である提携販売業者の取引につき,その契約締結過程,契約内容及び契約履行見込みについて必要な調査を行うことにより,消費者が不適正な取引による不利益を防止しなければならない,旨の規定を新設すべきである。
(2)抗弁対抗の効果を既払金返還に及ぼす
クレジット契約の与信対象である取引の無効・取消・解除により,消費者の販売業者に対する債務を解消できる事由があるときは,消費者はクレジット会社に対し残債務の支払いを拒絶できる(現行法30条の4)だけでなく,既払金の返還を請求できるものとすべきである。
(3)不適正与信防止義務違反に対する行政規制
クレジット会社が不適正与信防止義務を尽くさないことにより,消費者に被害が生じ又は生じる恐れがあるときは,行政規制の対象とすべきである。
2.過剰与信防止義務の実効性確保
(1)過剰与信防止義務の具体的基準
クレジット会社は,個人信用情報機関の照会,消費者の収入及び既存債務の調査等により,消費者の支払能力を超えるクレジット契約の与信を行ってはならない旨の現行法38条について,具体的な与信基準を法文又は政令に規定すべきである。
例えば,1業者の与信限度額につき,割賦金の年間支払額が年収の10%を超えないことなどの基準が想定される。
(2)過剰与信防止義務違反に対する行政規制
過剰与信防止義務に違反する与信により,消費者に被害が生じ又は生じる恐れがあるときは,行政規制の対象とすべきである。
ただし,行政規制だけでは,個別与信行為に対する規制の実効性が上がらないと考えられることから,民事効果を定めることが不可欠である。
(3)過剰与信防止義務違反に対する民事効果
過剰与信防止義務に違反する与信については,民事効果として,請求権の全部若しくは一部の制限又は既払金の全部又は一部の返還を認めるものとすべきである。
なお,上記与信限度額を超える場合,常にこうした民事効果が生じるものとするか,購入の必要性や支払い財源等を聴取したうえで相当と認めるときは適正な与信と評価するか(いわば立証責任の転換),検討が必要である。
(4)過剰与信防止に関する関連規定の整備
過剰与信防止義務の実効性を確保する手段として,1.個人信用情報機関の登録義務・照会義務を定めること,2.与信審査記録の作成・保存・開示義務を定めること,3.個品式クレジット契約書面(法30条の2の2)に消費者の収入・職業等の記載事項を加えること,などを整備すべきである。
3.割賦販売法の規制対象範囲の拡大
(1)割賦払い要件の廃止
現行法の「2ヶ月以上かつ3回以上の割賦払い」要件を廃止し,1回払いを含む後払い全体を適用対象とすべきである。
自社式割賦販売については割賦要件を維持することが相当である。
(2)「販売信用」の要件
翌月一括払い(いわゆるマンスリークリア方式)も販売信用の適用対象とすべきである。
(3)政令指定商品制の廃止
政令指定商品制を廃止し,原則としてすべてのクレジット契約を適用対象とすべきである。
(4)適用除外品目の取扱い
生鮮食料品,一定金額以下の取引など,法規制に適しない取引については,適用除外規定(ネガティブリスト)を設けることで対処すべきである。
4.個品割賦購入あっせんに対する規制の整備
(1)登録制の導入
個品割賦購入あっせん業者について,登録制度を設けるべきである。
(2)書面交付義務の規定
個品割賦購入あっせん業者に対して,クレジット契約書面の交付義務を課すべきである。
(3)契約書面の記載事項
個品式クレジット契約書面(訪問販売時)の法定記載事項(現行法30条の2の2)について,「商品購入の判断に影響を及ぼす重要な付帯特約事項」の記載義務を追加すべきである。
(4)クーリング・オフの規定
営業所等以外の場所においてクレジット契約を利用した取引について,商品販売取引のクーリング・オフ(現行法30条の2の3)にとどまらず,クレジット契約についてもクーリング・オフの対象とすべきである。
(5)行政規制
個品割賦購入あっせん業者の契約書面交付義務違反,不適正与信防止義務違反,過剰与信防止義務違反等について,行政規制の対象とすべきである。
個品式クレジット業者に対する行政規制権限を,都道府県にも並存的に付与すべきである。
5.複数事業者が関与するクレジットカード取引の適正化
(1)カード発行会社の消費者に対する責任の明確化
消費者にクレジットカードを発行するカード発行会社(イシュアー)は,販売業者と提携するカード会社(アクワイアラー),販売業者をアクワイアラーに取り次ぐ決済代行業者,イシュアーとアクワイアラーをつなぐ国際カードブランド会社,これらから委託を受ける情報処理会社など,複数事業者が関与するカード取引においても,消費者に対する不適正与信防止義務,過剰与信防止義務,契約書面交付義務,抗弁の対抗,その他の責任について,カード発行会社が負うことを明確に規定すべきである。
6.その他の検討事項
(1)法律の名称
割賦払い要件の廃止に伴い,「割賦販売法」という法律の名称自体が不適合となるので,例えば「販売信用法」等の名称に変更すべきである。
(2)割賦購入あっせんの用語の見直し
割賦要件の撤廃に伴い,「割賦購入あっせん」の用語自体が不適切となるので,用語の見直しが必要である。
(3)ローン提携販売の規定の廃止又は統合
割賦購入あっせん(法2条3項)とローン提携販売(法2条2項)は,販売業者が消費者の支払い債務を連帯保証すること以外は取引実態としてほとんど共通であり,かつ法規制の内容もほとんど共通であるから,定義規定の廃止又は統合を検討すべきである。
(3)割賦手数料と金利規制の統一
個品割賦購入あっせんの割賦手数料は,割賦払い期間に応じた利息の性質があることを踏まえ,割賦手数料と金利規制の統一を図るべきである。