埼玉弁護士会は,被疑者・被告人の権利を擁護する責務を負う弁護士の団体として,職業裁判官が独占してきた刑事裁判に一般市民の健全な常識を反映させるものであり,また,直接主義・口頭主義を実質化した公判中心主義の裁判を実現する重要な契機となる裁判員制度を成功させる立場から,裁判員裁判に対応できる弁護態勢を確立する決意を表明するとともに,裁判員制度の問題点の改善と,刑事司法全体についての改革の必要性を訴え,広く市民の理解を求めるものである。
1 弁護態勢の確立を目指す
当会は,これまでの刑事裁判が抱える問題を克服し,被疑者・被告人の権利・利益を擁護するため,裁判員裁判・刑事司法制度全般の問題点の改善,及び十分な弁護活動が保障される条件整備を要求しつつ,弁護活動の研鑽に励み,裁判員裁判に対応しうる弁護態勢を確保し,裁判員制度の実施に備えることを目指す。
2 裁判員制度に含まれる問題点の改善要求
当会は,裁判員制度について以下の改善を求める。
i 評議の検証を可能とし,また裁判員となる市民に過大な負担を負わせないために,守秘義務の対象について限定的な解釈運用を実現し,また罰則範囲を限定する法改正を求める。
ii
裁判官と裁判員の間に情報格差をもたらし,裁判官と裁判員が対等な立場で議論できなくなるおそれをできる限り防止するために,部分判決制度は,極めて例外的なケースに限って適用するような運用を求める。
iii 実施後の検証を重視し,3年後の施行状況検討(裁判員法附則9条)などの機会を通じて,よりよい裁判員制度へ向けた改善を行う。
3 刑事司法制度全般の問題点の改善要求
当会は,裁判員制度導入を一つの重要な契機とした取調の可視化や人質司法見直しの可能性をさらに推し進め,警察段階からの取調べの全過程の録画録音制度の導入,起訴前保釈制度創設や刑訴法89条1号4号改正など保釈制度の改革を求める。
4 弁護活動を保障するための条件整備
当会は,裁判員制度の実施を控え,より重要となった以下の条件整備を求める。
i 拘置所での夜間休日接見の広範な実現,裁判所接見室での十分な接見時間の確保等、
弁護人と被告人との十分な意思疎通を可能とするための諸施策の実行。
ii 裁判員裁判における国選弁護人複数選任の原則的運用。
iii 国選弁護人に対する労力に見合った報酬の確保及び必要経費の保障。
iv 速記官の養成再開を含む公判審理の記録手段の確保。
以上,決議する。