現行法の主な問題点
派遣法成立以来の構造的な問題点としては,以下の3点があげられる。低賃金で解雇が容易であり、労働組合が組織しにくい「日本的派遣労働」が大きく広がった背景には,派遣法に以下のような構造的問題点がある。
(1) 成立の経緯
わが国の派遣法は,成立当初から経営者側に有利な形態を備えていた。
派遣労働は本来「一時的労働(temporary work)」であり,かつ「派遣から常用へ」というのが,ヨーロッパにおける労働者派遣の大前提である。ドイツやイタリアでは,派遣終了後に常用雇用される者が3割から5割に達するという。しかし,我が国の派遣法のもとでは長期の労働者派遣が可能である。
派遣労働という概念を輸入する際に,一時的労働と翻訳せずに「派遣」という語を用いたこと自体から,この法律が長期派遣を容認していることが推測される。
(2) 差別待遇を禁止していないこと
諸外国では,派遣労働者につき,派遣先で同じ仕事をする労働者と同一かそれ以上の待遇でなければならないという法規制がなされている。一般労働者よりも不安定になってしまうという派遣労働の短所を,保護的法規制によって均衡を図るというのが,ヨーロッパ諸国に共通するスタイルである。
ところが,我が国では不安定雇用に加えて差別的労働条件の派遣労働を容認しており,労働者保護という点では,諸外国に大きく劣っている。差別待遇を禁止ないし是正措置を定めないという点では,わが派遣法は世界に例を見ない異常な法規制ともいえる。また,差別待遇の容認が,労働力を商品として扱い,価格のダンピングを生む元凶ともなっており,派遣労働者の待遇悪化に拍車をかけている。
(3) 形骸的存在である派遣元を雇用主としていること
我が国派遣法および労働行政の法運用は,派遣元と派遣労働者の関係が基本であり,そこにのみ労働契約関係が成立して派遣元が雇用主として基本的責任を負うという形式論を採用してきた。
したがって,労基法の使用者責任も派遣元に比重を置いて配分され,36協定締結,労災保険の加入などは,派遣元のみに適用されている。
しかし,その一方,登録型派遣が認められたために,派遣の空白期間でも派遣元は賃金支払いや休業保障責任を免除されている |