1996.11.13

破壊活動防止法による団体規制に反対する会長声明

公安調査庁長官は、オウム真理教に対して、破壊活動防止法(破防法)の「解散の指定」(破防法七条)を行うよう公安審査委員会に請求し、現在、公安審査委員会で審査が行われている。審査委員会の結論は早ければ年内とされている。
当会は、既に本年五月二五日の定時総会で、「破壊活動防止法による団体規制に反対する決議」を採択し、公安調査庁長官に対し「解散の指定」の処分請求手続の即時停止などを求めてきたところであるが、新たな事態の進展の中で、改めて破防法のオウム真理教に対する適用に反対する意思を表明する。
当会が破防法の適用に反対する理由は次のとおりである。
第一に、オウム真理教が「解散の指定」の処分を受けた場合、オウム真理教の構成員であった者の「団体のためにする行為」は刑罰をもって禁止されることとなる。この「団体のためにする行為」の概念は極めて不明確であり、該当者の日常生活の全般が公安調査庁や警察の監視下に置かれることを意味している。そして、該当者の日常生活は国民との何らかの交流の中にあるのだから、全ての国民の生活が国家権力の不断の監視の下に置かれることは必定である。これは憲法の保障する思想・信教・集会・結社・表現の自由に重大な危険をもたらすものである。
第二に、このような国民の基本的人権に重大なかかわりのある手続が、行政機関によって、非公開の中で、対審構造によらないままに行われることは、憲法の「適正手続の保障」条項に違反するおそれがあると考えるからである。
当会は、坂本弁護士一家の殺害も含めオウム真理教の犯したとされる反社会的行為をいささかも軽視あるいは宥恕するものではない。しかしながら、オウム真理教に対する国民の怒りを利用して、国民生活を国家権力の不断の監視の下に置くこととなる破防法の「解散の指定」についても容認することはできない。
当会は、公安調査委員会に対し、オウム真理教に対する「解散の指定」処分をなすことのないよう強く要請するものである。
右声明する。

1996(平成8)年11月13日
埼玉弁護士会会長  木村 壮

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