1997.02.12

オウム真理教団に対する破防法の適用の棄却決定に対する会長声明

  1. 公安調査委員会は、公安調査庁から請求されていたオウム真理教団に対する破壊活動防止法(破防法)に基づく団体に対する解散指定の請求を棄却した。
    その理由は、「公安調査庁提出の証拠をもってしては、本団体が、今後ある程度近接した時期に、継続または反復して暴力主義的な破壊活動に及ぶ明らかなおそれがあると認めるに足りるだけの十分の理由があると認めることはできない。」というものであった。
  2. 当会は、既に総会決議や会長声明などで、オウム真理教関係者が犯したとされる犯罪に対する刑罰権の発動や宗教法人法や破産法による対応は別論として、オウム真理教団に対する破防法による解散指定の請求に反対する立場を明らかにしてきている。その理由とするところは、破防法が「結社の自由」や「思想・信条の自由」を侵害するおそれのあるものであり、解散指定の手続が「適正手続条項」に違反することなどであった。
  3. 当会のこのような立場からすれば、今回の棄却決定には、基本的には、基本的人権の尊重と民主主義の擁護を貫いたものとして積極的に評価できるものである。
    しかしながら、この決定は公安調査庁の処分請求が適法に行われたとしていること、今後も、公安調査庁の調査活動を容認していることなど、問題を残す点も存在していることを指摘しておかなければならない。
  4. 当会としては、今後、「本団体の構成員の信仰生活を保障しつつ、通常の社会生活を営めるように環境を整備し、様々な情報に接する機会をできるだけ多く与え、その正常な社会復帰を促進することが肝要」とするこの決定の見解に賛意を表明するとともに、基本的人権の擁護と社会正義の実現のために引き続き努力する決意である。
    右声明する。

1997(平成9)年2月12日
埼玉弁護士会会長  木村 壮

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