2002.05.18

民事法律扶助事業に対する抜本的な財政措置を求める決議

2002年(平成14年)5月18日 埼玉弁護士会

  1. 平成12年10月、民事法律扶助法の施行以降、扶助事業における援助件数は飛躍的に伸びている。特に、代理援助は法施行前の平成11年度12,700件に対し、施行年の平成12年度は約20,000件、平成13年度は約29,800件となり、平成14年度は、40,000件に達することが予想されている。
    しかるに、民事法律扶助事業に対する国庫扶助金は十分といえず、平成13年度においては、民事法律扶助事業における代理援助の上限枠を決定し対応することとなった。そのため、財団法人法律扶助協会埼玉県支部においては、2月後半と3月分の援助申込受付をしたものの、財源不足から扶助の正式決定を本年度4月まわしとせざるをえない事態となった。
  2. このような事態にもかかわらず、国は、平成14年度の民事法律扶助事業について財団法人法律扶助協会の66億円余の国庫補助金の要望に対して、平成13年度に比べて9000万円弱の増額となる約30億円の予算措置しか講じなかった。
    このような予算措置では、民事法律扶助事業における代理援助は、平成14年度においても、その途中において前年度と同様な援助決定の保留をせざるを得ないことになることは避けられないものである。
  3. 民事法律扶助制度は、憲法32条の「裁判を受ける権利」を実質的に保障する制度であり、法3条においてもその整備を「国の責務」と定めている。司法制度審議会の意見書においても、民事法律扶助の拡充を求めているところである。
    当会は、国に対し、国民の裁判を受ける権利を保障し、利用しやすい司法を実現するために、民事法律扶助事業に対する補正予算を計上するなど直ちに必要な財政措置を講ずることを強く求めるものである。

以上のとおり決議する。

決議の理由

平成12年10月に施行された民事法律扶助法は、その第3条において国の責務として、民事法律扶助事業の統一的な運営体制の整備及び全国的に均質な遂行のために必要な措置を講ずると定め、また、財団法人法律扶助協会はその指定法人として、民事法律扶助事業の全国的に均質な遂行の実現に勤め、法律扶助が国民の利用しやすいものとなるよう配慮する義務を負っている。
ところで、民事法律扶助事業のうち、代理援助件数は、法施行前の平成11年度は12,700件であったが法施行年の平成12年度は20,098件、平成13年度は29,898件と急増し、平成14年度には40,000件に近づくのではないかと予測される状況にある。
一方、財団法人法律扶助協会は国に対し、平成13年度の民事法律扶助事業の補助金として59億8000万円の要望をしたところ、約28億5500万円にとどまった。
そのため平成13年度においては、年度途中において財源不足となり、当会を含む全国の多数の支部で、援助申込受付を中止したり、申込は受けても扶助決定を4月以降とせざるを得ないなどの深刻な状態が生ずるに至った。
平成14年度は法務省に対し約66億円の予算要望を行い、法務省は36億円の概算要求をまとめたものの、内閣府及び財務省の査定を受けて、要望額の半分以下である約30億円しか認められていない。
同協会埼玉県支部においても、平成13年度2月、3月分の積み残し137件を加えたため、平成14年度の4月の扶助決定件数は既に252件に達している。
このままの国庫扶助金では、平成14年度においても前年度と同様、財源不足の為に長引く経済不況を背景とした自己破産申立事件などの急増に対応できず、年度途中で再び援助申込受付を中止せざるを得ない状態に立ち至ることは明らかである。
これでは憲法第32条の「裁判を受ける権利」を実質的に保障する制度である民事法律扶助制度は破綻し、経済的弱者の司法へのアクセスが閉ざされる恐れがある。
平成13年6月12日に発表された司法制度改革審議会の「意見書」においても「司法制度改革に関する施策を実地するために必要な財政措置について、特段の配慮をなされるよう求める」とされており、平成14年3月19日に閣議決定された「司法制度改革推進計画」でも「民事法律扶助制度について、対象事件・対象者の範囲、利用者負担の在り方、運営主体の在り方等について、更に総合的・体系的な検討を加えた上で一層充実することとし、本部設置期限(平成16年11月)迄に、所要の措置を講じる」ことを明記し、国に対して民事法律扶助事業の拡充を求めている。

よって埼玉弁護士会は、国に対し、国自らの責務として、国民の裁判を受ける権利を実質的に保障し、誰もが利用しやすい司法を実現するために、民事法律扶助事業に対する抜本的な財政措置を速やかに講ずることを強く求めるものである。

以上

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