2004.06.15

司法修習生の給費制の堅持を求める会長声明

司法制度改革推進本部法曹養成検討会において、司法修習生の給費制廃止と貸与制への移行が議論されていたが、本日の検討会において、給費制廃止及び貸与制の導入に向けた意見とりまとめが行われた。 当会は、昨年10月28日に司法修習生の給費制度維持を求める声明を発表したが、本日の意見取りまとめに対して、あらためて給費制の堅持を求めるものである。

給費制は、司法修習生の生活を保障することによって修習に専念させることを目的とした制度であり、司法修習制度と不可分一体のものである。給費制を廃止することは、修習専念義務を危うくするものと言わざるを得ない。

また、法曹は、国民の権利を擁護し、法の支配を実現することを使命とするものであり、優れた人権感覚を有し、高い倫理観を持つ者が担い手でなければならない。このような人材は国民一般から幅広く求められるべきものである。給費制を廃止することは、経済的余裕のあるごく限られた階層の者でなければ法曹の職につけないという弊害を招く恐れが強く、容認しがたいものである。さらに、法曹資格を得るためには、司法修習生となる前に、法科大学院に2年ないし3年在学することが多くの場合必要となるが、これにより、既に法曹となるための財政的負担は著しく増大しているのであり、これに給費制の廃止が加われば、法曹の出身者が富裕な階層のみに限られてしまうことにもなりかねない。

給費制は法曹、とりわけ弁護士の公益性を制度的に担保する役割を果たしてきたものであり、その廃止が弁護士や法曹全体のあり方に重大な影響を与えることは明らかである。

また、貸与制の導入によって、上記の弊害が是正されるものとはいえず、かえって多くの新人法曹が就業の第1歩を踏み出したときから多額の債務を負担するという事態を生じることになる。これは、国民の権利を擁護し、法の支配を実現するという法曹本来の使命に見合った活動を阻害することにつながりかねず、また、貸与の主体や返済条件等によっては、自由で独立した修習が阻害されたり、実質的に修習専念義務が果たされないこととなる恐れもある。

近年、医師養成の分野においても、研修医の生活を保障し、研修に専念できる環境を整えるために国費を支出するなどの動きがある中、司法修習生の給費制を廃止することは、こうした社会の動きにも逆行するものといわなければならない。 よって、当弁護士会は、再度、司法修習生に対する給費制を堅持することを強く求めるものである。

以上

2004年6月15日
埼玉弁護士会会長  中山 福二

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