2004.06.15

裁判所速記官の養成再開と国会附帯決議の遵守を求める会長声明

近年、日本社会がいっそう国際化、複雑化し、政府の規制緩和、構造改革政策が進行するなかで、頻発する紛争の早期解決、社会的弱者救済、基本的人権の擁護などのために、司法に対しては公正で迅速な裁判の実現が求められている。今般、国民の司法参加の新しい制度として裁判員制度が成立し、2009年から実施されることになったが、裁判員制度においては、連日開廷に対応した正確かつ迅速な裁判記録の作成が求められている。このように近年の司法においては、公正かつ迅速な裁判を実現するために、正確かつ迅速な裁判記録作成の需要が増大している。

現在、証人尋問調書等の逐語録の作成については、裁判所速記官らが開発した速記符号自動反訳ソフト「はやとくん」と米国製コンピュータ内蔵速記タイプを用いることによってリアルタイムの逐語録作成が可能となっており、民事事件、刑事事件を含めたあらゆる事件の逐語録作成のために、全国の裁判所で活躍している。

一方、最高裁判所は1997年に裁判所速記官の新規採用を停止した。しかし、今期通常国会で可決成立した「裁判所法の一部を改正する法律」には、衆参両院で「逐語録に対する需要に的確に応えられる態勢を整備するとともに、裁判所速記官が将来の執務態勢及び執務環境等について不安を抱くことのないよう十分な配慮をすべきである。」との附帯決議がなされた。増大する逐語録作成の需要への対応とそれを実現することができる裁判所速記官による逐語録作成態勢を考えると、当然の決議である。

よって、当会は最高裁判所に対し、裁判所速記官の養成を早期に再開して、来る裁判員制度を含めて増大する逐語録作成の需要に適切に対応できるようにするとともに、裁判所速記官の執務態勢及び執務環境等について十分な配慮を求めた国会附帯決議の遵守を求めるべく、この声明を発するものである。

以上

2004年6月15日
埼玉弁護士会会長  中山 福二

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