2005.09.21

死刑執行に関する会長声明

9月16日、大阪拘置所において死刑確定者1名に対し、死刑が執行された。
死刑については、1989年12月の国連総会で死刑廃止条約が採択され、国連人権委員会は1997年4月以降、毎年、日本などの死刑存置国に対し、死刑廃止に向けて死刑の執行を停止することなどを求めている。欧州評議会は、2001年6月、日本とアメリカに対し死刑執行の一時停止を行い、早急に死刑廃止に必要な段階的措置をとるよう促す旨の決議を採択している。
日本においては、死刑に直面する者に対する権利保障は極めて不十分な状態にあり、また、1980年代の4つの死刑再審無罪事件や本年4月の名張事件死刑再審無罪判決にもかかわらず、誤判防止のため制度改革は不十分な状態にある。また政府による極端な密行主義のもと、死刑に関する情報はほとんど明らかにされていない状態にもある。
日弁連は、2002年11月「死刑制度問題に関する提言」を発表し、死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法の制定を提唱した。また2004年10月開催の第47回人権大会では「死刑執行停止法の制定、死刑制度に関する情報の公開及び死刑問題調査会の設置を求める決議」を採択して、死刑の執行停止を求めているところであり、当埼玉弁護士会も2004年4月シンポジウム「徹底討論・死刑の存廃」を開催し、死刑の存置、廃止論を巡って充実した議論を行い、また現行の刑事裁判制度や運用に深刻な問題点があることなどを明らかにしてきたところである。
死刑制度問題については、今こそ広範な市民的議論を尽くすとともに、制度全般を見直し再検討をなすべきときであり、このような時期に再び死刑の執行がなされたことは誠に遺憾である。当埼玉弁護士会は、政府に対し、今後、広範な市民的議論が尽くされるまでの間、死刑の執行を停止するよう改めて強く求めるものである。

2005年9月21日
埼玉弁護士会会長 田中重仁

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