2006.08.31

割賦販売法改正に関する意見書

2006年(平成18年)8月31日
埼玉弁護士会 会長 蔭山 好信

意見の趣旨

クレジット制度の構造的危険性とこれに対する現行割賦販売法の不十分性から,クレジット契約に伴う消費者被害が多発している実態に鑑み,次のような割賦販売法の改正および関連制度の改善を求める。

  1. 不適正与信防止義務の明文化及び民事効果としての抗弁接続の徹底
    1. 不適正与信防止義務の明文化
      クレジット会社は,クレジット契約の与信対象である提携販売業者の取引につき,その契約締結過程,契約内容及び契約履行見込みについて必要な調査を行うことにより,消費者が不適正な取引による不利益を防止しなければならない,旨の規定を新設すべきである。
    2. 抗弁対抗の効果を既払金返還に及ぼす
      クレジット契約の与信対象である取引の無効・取消・解除により,消費者の販売業者に対する債務を解消できる事由があるときは,消費者はクレジット会社に対し残債務の支払いを拒絶できる(現行法30条の4)だけでなく,既払金の返還を請求できるものとすべきである。
    3. 不適正与信防止義務違反に対する行政規制
      クレジット会社が不適正与信防止義務を尽くさないことにより,消費者に被害が生じ又は生じる恐れがあるときは,行政規制の対象とすべきである。
  2. 過剰与信防止義務の実効性確保
    1. 過剰与信防止義務の具体的基準
      クレジット会社は,個人信用情報機関の照会,消費者の収入及び既存債務の調査等により,消費者の支払能力を超えるクレジット契約の与信を行ってはならない旨の現行法38条について,具体的な与信基準を法文又は政令に規定すべきである。
      例えば,1業者の与信限度額につき,割賦金の年間支払額が年収の10%を超えないことなどの基準が想定される。
    2. 過剰与信防止義務違反に対する行政規制
      過剰与信防止義務に違反する与信により,消費者に被害が生じ又は生じる恐れがあるときは,行政規制の対象とすべきである。
      ただし,行政規制だけでは,個別与信行為に対する規制の実効性が上がらないと考えられることから,民事効果を定めることが不可欠である。
    3. 過剰与信防止義務違反に対する民事効果
      過剰与信防止義務に違反する与信については,民事効果として,請求権の全部若しくは一部の制限又は既払金の全部又は一部の返還を認めるものとすべきである。
      なお,上記与信限度額を超える場合,常にこうした民事効果が生じるものとするか,購入の必要性や支払い財源等を聴取したうえで相当と認めるときは適正な与信と評価するか(いわば立証責任の転換),検討が必要である。
    4. 過剰与信防止に関する関連規定の整備
      過剰与信防止義務の実効性を確保する手段として,1.個人信用情報機関の登録義務・照会義務を定めること,2.与信審査記録の作成・保存・開示義務を定めること,3.個品式クレジット契約書面(法30条の2の2)に消費者の収入・職業等の記載事項を加えること,などを整備すべきである。
  3. 割賦販売法の規制対象範囲の拡大
    1. 割賦払い要件の廃止
      現行法の「2ヶ月以上かつ3回以上の割賦払い」要件を廃止し,1回払いを含む後払い全体を適用対象とすべきである。
      自社式割賦販売については割賦要件を維持することが相当である。
    2. 「販売信用」の要件
      翌月一括払い(いわゆるマンスリークリア方式)も販売信用の適用対象とすべきである。
    3. 政令指定商品制の廃止
      政令指定商品制を廃止し,原則としてすべてのクレジット契約を適用対象とすべきである。
    4. 適用除外品目の取扱い
      生鮮食料品,一定金額以下の取引など,法規制に適しない取引については,適用除外規定(ネガティブリスト)を設けることで対処すべきである。
  4. 個品割賦購入あっせんに対する規制の整備
    1. 登録制の導入
      個品割賦購入あっせん業者について,登録制度を設けるべきである。
    2. 書面交付義務の規定
      個品割賦購入あっせん業者に対して,クレジット契約書面の交付義務を課すべきである。
    3. 契約書面の記載事項
      個品式クレジット契約書面(訪問販売時)の法定記載事項(現行法30条の2の2)について,「商品購入の判断に影響を及ぼす重要な付帯特約事項」の記載義務を追加すべきである。
    4. クーリング・オフの規定
      営業所等以外の場所においてクレジット契約を利用した取引について,商品販売取引のクーリング・オフ(現行法30条の2の3)にとどまらず,クレジット契約についてもクーリング・オフの対象とすべきである。
    5. 行政規制
      個品割賦購入あっせん業者の契約書面交付義務違反,不適正与信防止義務違反,過剰与信防止義務違反等について,行政規制の対象とすべきである。
      個品式クレジット業者に対する行政規制権限を,都道府県にも並存的に付与すべきである。
  5. 複数事業者が関与するクレジットカード取引の適正化
    1. カード発行会社の消費者に対する責任の明確化
      消費者にクレジットカードを発行するカード発行会社(イシュアー)は,販売業者と提携するカード会社(アクワイアラー),販売業者をアクワイアラーに取り次ぐ決済代行業者,イシュアーとアクワイアラーをつなぐ国際カードブランド会社,これらから委託を受ける情報処理会社など,複数事業者が関与するカード取引においても,消費者に対する不適正与信防止義務,過剰与信防止義務,契約書面交付義務,抗弁の対抗,その他の責任について,カード発行会社が負うことを明確に規定すべきである。
  6. その他の検討事項
    1. 法律の名称
      割賦払い要件の廃止に伴い,「割賦販売法」という法律の名称自体が不適合となるので,例えば「販売信用法」等の名称に変更すべきである。
    2. 割賦購入あっせんの用語の見直し
      割賦要件の撤廃に伴い,「割賦購入あっせん」の用語自体が不適切となるので,用語の見直しが必要である。
    3. ローン提携販売の規定の廃止又は統合
      割賦購入あっせん(法2条3項)とローン提携販売(法2条2項)は,販売業者が消費者の支払い債務を連帯保証すること以外は取引実態としてほとんど共通であり,かつ法規制の内容もほとんど共通であるから,定義規定の廃止又は統合を検討すべきである。
    4. 割賦手数料と金利規制の統一
      個品割賦購入あっせんの割賦手数料は,割賦払い期間に応じた利息の性質があることを踏まえ,割賦手数料と金利規制の統一を図るべきである。

意見の理由

第1 はじめに

産業構造審議会割賦販売分科会基本問題小委員会は,2006(平成18)年6月7日,報告書「クレジット取引における課題と論点整理」を取りまとめた。
同報告書は,論点の提示内容が抽象的な表現にとどまるため,割賦販売法の具体的な改正の方向性が明確ではないものの,少なくとも,現行法の問題点について幅広く検討課題として提示し,クレジット取引の法制度全般について抜本的な見直しを要請した点で,高く評価できるものである。
そこで,今後の具体的な検討においては,クレジット取引の構造的な危険性が現れたクレジット被害の実態を踏まえたうえで,実効性ある法制度の改正の措置を講ずべきである。

第2 クレジット取引の構造的危険性と被害実態

  1. クレジット取引の経済的本質
    クレジット契約を利用する購入者には,高額の商品を代金後払い・分割払いで購入することができるという利便性がある。ただし,その利便性は,販売業者の自社割賦販売方式の場合と三者型割賦購入あっせんの場合と共通であって,三者型クレジット特有のものではない。
    他方,販売業者にとっては,クレジット契約を利用することにより,購入者の支払能力を考慮することなく高額商品を販売できること,クレジット会社から立替金を速やかに受領できることなどの利便性がある。
    したがって,クレジット取引の経済的本質は,購入者に対する与信という側面というよりも,販売業者に対する企業与信の性質があるということができる。
  2. クレジット取引の運営実態
    1. クレジット契約手続の流れ
      クレジット契約は,クレジット会社と提携販売業者(加盟店)が商品販売と信用供与に関して予め継続的な提携関係(加盟店契約)を締結して取引が開始される。
      個品式クレジット契約(個品割賦購入あっせん)についてみると,クレジット会社は加盟店にクレジット契約書類を事前に預託しておき,加盟店は,商品の販売について顧客を勧誘するとともに,代金の支払方法について提携するクレジット会社のクレジット契約を利用するよう申込用紙を提示し,加盟店が割賦金の支払月額・支払回数等の支払条件について協議し,クレジット契約書類の作成も,契約者の住所・氏名・捺印等の欄を除き,商品欄・支払条件欄等はすべて加盟店が記入するのが通常であり,作成された契約書類を加盟店からクレジット会社へFAX及び原本送付により提出する。
      クレジット会社は,加盟店から提出されたクレジット契約書の内容を前提に,消費者に対する電話確認と信用情報の調査を行い,与信の決定(クレジット契約締結の承諾)を行う。
    2. クレジット契約の経済的機能
      こうして,クレジット会社としては,顧客の獲得や契約内容の協議や契約書類作成等の営業活動の大半を加盟店に業務委託して,効率的にクレジット契約を獲得し経済的利益をあげることができる。
      他方,販売業者としては,代金債権回収業務や貸し倒れリスクを負担することなく,高額商品を販売することができる。
      これに対し,消費者の目からすれば,商品販売の勧誘及び代金支払方法の交渉や契約書面の作成が販売業者によって同時並行的に行われることから,一体的な手続きだと受け止めやすい。
      こうした取引実態を踏まえれば,クレジット会社と加盟店は,商品の販売と信用供与の取引について密接不可分な関係に立っており,「クレジットを利用した商品販売という共同事業」とも評価しうる実態がある。
  3. 構造的危険性と被害類型
    前述のとおり,クレジット契約は,クレジット会社が加盟店に契約締結業務の大半を委託し,契約の履行場面にも関与することなく,直ちに立替金を加盟店に交付するシステムであることから,資本力や売掛金回収能力のない零細販売業者でも容易に高額商品の販売活動を行うことができるという経済的特質がある。
    その反面で,クレジット契約を利用するがゆえに消費者被害が発生しやすいケースがあるという意味で,クレジット契約の構造的危険性から生じる病理現象としてのクレジット被害が多発している実態がある。
    以下に,構造的危険性の内容と被害類型を分類する。
    1. 第1類型(債務不履行型)
      クレジット契約を利用する加盟店は,クレジット会社から商品代金を直ちに回収できるため,その後は商品引渡し・役務提供等の誠実な履行を促す経済的動機付け(自社割賦販売であれば割賦金の支払い受けるために履行が必要である)が消滅する。その結果,クレジット契約を利用する販売業者は,初めから違法取引を狙っていない一般の販売業者であっても,債務不履行や不完全履行が生じやすくなり,または代金取得時期と履行時期のズレが慢性化し不健全な経営体質を招きやすい。
      【エステティックサロン「エステdeミロード」倒産事件】エステティックサロンの大手が,クレジット契約を利用することにより長期継続的コース契約を締結させることで営業を拡大したが,立替金を先取りして役務提供の債務が累積したことが経営不健全化の重要な原因となり倒産した。消費者はエステサービスが受けられないのにクレジットの請求を受けるという状態となり,全国で大規模な被害が発生した。
      【ジェイメディア事件】駅構内に電光広告を掲載する契約(5年間)を,クレジット契約を利用して締結する取引。契約者は,毎月の広告掲載料を毎月引き落とすという意識で契約する者が多いが,実際は5年分の立替金を広告業者が一括で先取りし,その後経営破綻で倒産したため,広告の掲載はできないのに多額のクレジット債務だけが残るという被害が東日本各地で発生した。
      【悪質リフォーム業者の倒産事例】訪問販売で必要性の乏しい高額なリフォーム契約を勧誘し,代金につきクレジット契約を利用して締結させるが,その工事は下請業者に行わせて施行内容がずさんでトラブルとなる事例が繰り返された。
      リフォーム工事契約を締結して,先に工事完成確認書等にサインをさせるなどして立替金を先に取得しながら,工事を施工しないまま倒産する詐欺的事例も発生した。
    2. 第2類型(違法販売・違法取引型)
      クレジット契約はクレジット会社が勧誘場面や履行場面に関与せず立替金を直ちに販売業者に交付することから,悪質販売業者が違法な勧誘行為によりクレジット契約を利用することで次々と契約を締結させ,またはクレジット契約を利用して破綻必至の違法な取引を展開し,問題が発覚すると倒産させて逃げるという手口に結びつきやすい。
      【アポイントメントセールスの事例】
      「旅行優待券をプレゼントする」などと販売目的を隠して営業所等に呼び込み,強引な勧誘によりクレジットを利用して高額なビデオ教材等の契約に追い込む。20年以上前から繰り返し発生している被害であり,クレジット契約があるからこそ,一気に高額の契約を締結させることができる。
      【マルチ商法の商品販売事例】会員になって知人を紹介すれば高額の収入が得られるなどと勧誘して,入会時に高額の商品をクレジット契約を利用して購入させるが,会員拡大の販売組織は破綻必至であり,大半の会員が損失を被るシステムのため,業者が倒産した後はクレジットの支払いだけが残る。クレジット会社は,単なる商品販売業者だと思って加盟店契約を結んだと主張する例が多い。
      【原画版権商法】絵画を購入したうえで版権使用契約により預託すれば,毎月のクレジット支払額以上の版権使用料を支払うという勧誘により,クレジットを利用し絵画を購入させるが,実際には絵画を利用した版権使用の実体がなく,その後業者が倒産してクレジット債務が残る。
      数年前にユニバーサルライフが各地で活動し被害を発生させて倒産したが,最近はこれと同様な手口の「絵画レンタル商法」(絵画のレンタル料を支払うと称してクレジットを利用して販売する手口)が,複数の業者により発生している。
      【アイディック節電機商法】毎月のクレジットの支払額よりも節電効果により減額される電気代の方が得であると称して,クレジット契約を利用して節電機を販売したが,実際は節電効果のない虚偽の説明であり,その後アイディックは倒産した。アイディックは10年近く営業を継続していたが,その間に提携するクレジット会社が順次変わり,後半はサラ金とも提携して販売活動を展開していた。
      【サラ金がクレジット業務に参入】マルチ商法や内職商法など,悪質な販売業者による商品販売について,サラ金が販売業者と提携して借入申込書を販売業者に預けておき,商品販売に伴って代金相当額を融資するという取引方法を取っている。取引の実質は個品割賦購入あっせんに該当するものであるが,サラ金側は単なる金銭消費貸借であると主張して,抗弁接続を認めない対応を繰り返している。
      【出会い系サイトでクレジットカードを利用】インターネットの出会い系サイトにアクセスして利用代金をクレジットカードで決済したところ,詐欺的な業者のため50万円以上請求された。利用したのは大手のクレジットカードであるが,国際ブランド会社や海外の決済代行業者を経由して国内の悪質出会い系サイト業者が提携していたため,カード発行会社は利用したサイト業者名や利用明細すら把握していない。
    3. 第3類型(過剰与信型)
      クレジット契約の利用により,販売業者は代金回収見込みを考慮することなく高額商品を販売できること,消費者は経済的な負担感をさほど感じないで高額商品の契約をしがちであることから,加盟店とりわけ訪問販売業者は,消費者の支払能力を無視して高額な契約を次々と締結させる危険性がある。
      【リフォーム工事次々販売被害の事例】判断能力が低下した高齢者を狙って,必要性のないリフォーム工事をクレジット契約を利用して次々と販売する手口。
      埼玉県富士見市で発生したリフォーム詐欺業者の次々販売被害は,年金暮らしの高齢者が合計4000万円以上のリフォーム工事をクレジット契約を利用して締結し,自宅が競売に付されたことで発覚したが,自宅の競売申立はリフォーム業者ではなくクレジット会社が行ったものである。悪質リフォーム業者はクレジット契約があるからこそ消費者の支払能力を超える販売が可能であった。
      【呉服次々販売被害,布団次々販売被害】判断能力や拒絶能力が低下した高齢者を狙って,必要性のない呉服や布団を次々と販売する手口である。年金暮らしの高齢者が支払能力を超えるクレジット契約を締結するのは,販売業者の強引な販売方法とともに,クレジット会社の与信審査の甘さが存在するからこそ実行できるものである。
    4. 第4類型(付随特約型)
      クレジット会社が加盟店の契約締結場面や履行場面に関与していないことから,加盟店がこれを悪用して(加盟店契約に違反して),クレジット契約書に記載のないセールストークや付随的特約によって不適正な販売活動を展開する危険性がある。前述の原画版権商法やマルチ商法も,商品販売に付帯特約がセットされ,クレジット契約書にはそれが記載されていないという点で共通であり,近年のクレジット被害の多くがこの類型あるといえる。
      【学習指導付き教材販売の事例】訪問販売業者が,教材の購入者には個別指導を付けるという勧誘で高額の学習教材を販売するが,実際には学習指導の体制がないという欺瞞的商法である。抗弁対抗規定が導入された1894年当時から繰り返されている手口であるが,クレジット会社は付帯特約の存在やセールストークを確認せずに与信するためトラブルが絶えない。
      【ココ山岡事件】
      キャッチセールスの方法により,5年後に定価で買戻すという特約付きで,クレジットを利用して宝石販売を全国展開した揚げ句倒産した。倒産後,全国38地区で約9000人の被害者がクレジット会社8社に訴訟を提起した。クレジット会社は,宝石販売について与信したものであり買戻し特約は関係ないと主張していたが,ココ山岡の元役員が詐欺罪で有罪判決を受け,クレジット会社の加盟店管理責任が指摘される中で,全面的に抗弁接続を認める統一和解で解決した。
      【ダンシングモニター商法事件】布団を購入してモニター会員となりアンケートに答えれば,クレジットの支払額よりも高額なモニター料が毎月支払われると勧誘していたが,実際には限定募集ではなく約14000人の顧客のほとんどにモニター料を約束していたため倒産した。クレジット会社は,モニター特約はクレジット契約とは関係ないと主張していたが,判決は,モニター特約と布団販売は不可分の取引であり抗弁事由となること,モニター商法を展開していたことにつきクレジット会社の加盟店管理責任の違反があることを認定し,全面的な抗弁対抗が認められた。
    5. 第5類型(不正利用型)
      資金繰りに窮した販売業者が,架空のクレジット契約書をクレジット会社に提出することにより立替金を騙取する手口であり,その後販売業者は倒産し,クレジット会社から消費者に対する請求が始まる。クレジット契約書の作成を販売業者に委ね,契約締結場面や履行場面にクレジット会社が関与していないという仕組みを悪用した行為である。
      【いわゆる空売り名義借り(名義貸し)の事例】売買契約が存在しないにも関わらず,販売業者が架空のクレジット契約書を提出して立替金を不正取得するにつき,以前取引のある顧客に対し,「迷惑は掛けないから電話が来たらハイハイと答えておいてください」と依頼し,その意味が良く分からない消費者が空売りに巻き込まれるケース。20年以上前から同様な被害が繰り返し発生している。クレジット会社は,電話で契約意思を確認したから消費者の責任であると主張するが,販売業者の営業状態や商品引渡しの調査確認をしていないケースが多い。
      【二重契約被害】以前クレジット契約を利用した顧客に対し、「当社の提携先クレジット会社が変更になったので,クレジット契約書を書き換える必要がある」などと称して新たな契約書を作成させるが,実は以前の契約も存続したままであり,立替金を二重に取得する手口である。販売業者とクレジット会社の提携関係の内情は,消費者には全く見えないため,契約書の書き換えの意味を理解していないことがほとんどであり,販売業者が倒産するまでは割賦金の支払いを継続するため,消費者が気づかないケースが多い。
  4. クレジット法制度の基本的考え方
    クレジット会社は,販売業者との間で継続的な提携関係(加盟店契約)を締結し,販売業者による商品販売活動と一体的にクレジット契約を展開する事業者であるから,販売業者と単発的な取引をするに過ぎない消費者との間には,調査能力・判断能力・リスク負担能力に明らかな格差がある。
    そうであれば,クレジット取引の公正さを確保し消費者に安全・安心なクレジット取引を提供する責務は,基本的にクレジット会社が負うべきであるし,販売業者がクレジット取引に関して消費者に損害を生じさせた場合のリスクは,販売業者と提携してクレジット取引を業として展開し利益を得ているクレジット会社が負担することこそ公平であることは明らかである。
    これをクレジット会社の消費者に対する取引上の責任として整理するならば,クレジット契約による与信行為の付随的義務である誠実公正義務として,不適正与信防止義務及び過剰与信防止義務を負うものと解される。
    最近の裁判例においても,信販会社が消費者に対する信義則上の加盟店管理責任を負うこと,これを怠ったときは,1.消費者の抗弁対抗の主張が制限されないこと(ダンシング事件大阪高裁平成16年4月16日判決等多数),2.割賦販売法が直接適用されない事案についても支払拒絶の抗弁対抗を認めること(ジェイメディア事件仙台地裁平成17年4月27日判決),3.既払金について損害賠償責任を負うこと(ダンシング事件静岡地裁浜松支部平成17年7月11日判決),などが認められている。

第3 割賦販売法改正のあり方

  1. 不適正与信防止義務の明文化及び民事効果としての抗弁接続の徹底
    1. 現行法
      不適正与信防止義務(加盟店管理義務)に関する規定は存在しない。
      これまでに,経済産業省(通商産業省)から業界団体に向け加盟店管理の強化を
      求める通達が繰り返し発せられている(昭和57年4月13日付け通達,昭和58年3月11日付け通達,平成4年5月26日付け通達,平成7年10月23日付け通達,平成14年5月15日付け通達,平成16年12月20日付け通達など)。
      現行法30条の4は,販売業者に対し商品販売契約の解除・取消・無効等の抗弁
      事由があるときは,クレジット会社に対抗することができる(法30条の4)が,未払金の支払い拒絶にとどまり,それまでに支払った既払金の返還義務までは規定していない。
    2. 問題点
      加盟店管理通達に違反しても,クレジット会社には何ら不利益が生じないため,1.債務不履行型,2.違法販売・違法取引型,3.付随特約型,4.不正利用型などのクレジット被害は相変わらず繰り返されている。
      とりわけ,ココ山岡事件(5年後買戻し商法),ダンシング事件(布団モニター商法),愛染苑山久事件(呉服モニター商法),ジェイメディア事件(電光広告掲載契約被害)など,クレジット契約を利用した悪質商法の大規模被害が最近でも繰り返されていることは,不適正与信防止の法制度が不十分であることを示している。
      抗弁対抗規定が未払金の支払い拒絶にとどまるため,クレジット会社は,加盟店の不正販売行為を察知しても,直ちに加盟店への与信を中止して倒産に追い込むより,取引を徐々に減少させつつ加盟店が存続するほうが債権回収に有利であるため,不適正販売行為(不適正与信)を調査・管理する経済的動機付けが働かない。
      信販会社は,訴訟の場では,今でも「加盟店調査義務はない」と争っている。
      加盟店管理通達の名宛人でない貸金業者がクレジット業務に参入して,通達を無視して悪質業者と提携して被害を多発させている事態も発生している。
    3. 提言
      • 不適正与信防止義務の明文化
        クレジット会社は,クレジット契約の与信対象である提携販売業者の取引につき,その契約締結過程,契約内容及び契約履行見込みについて予め必要な調査を行うことにより,消費者が不適正な与信による不利益を被らないよう防止しなければならない,旨の規定を新設すべきである。
        諸外国の消費者信用法には,不適正与信防止義務は見当たらないが,クレジット被害の未然防止・拡大防止を図るためにはこうした規定が必要である。
      • 不適正与信防止義務違反に対する行政規制
        クレジット会社が不適正与信防止義務を尽くさないことにより,消費者に被害が生じ又は生じる恐れがあるときは行政規制の対象とするという規定は,実効性確保のため必要である。
         ただし,違反に対する効果が行政規制だけでは,現在の通達行政から大きく変わるものではなく,クレジット会社に対する経済的動機付けとならないため,民事効果を規定することが必要不可欠である。
      • 抗弁対抗の効果を既払金返還に及ぼすこと
        クレジット契約の与信対象取引の無効・取消・解除により,消費者の販売業者に対する債務を解消できる事由があるときは,クレジット契約自体も解消し既払金の返還を請求できるものとすべきである。
        なお,不適正与信防止義務違反に対する民事効果としては,「不適正与信防止義務に違反したときは,損害賠償(既払金返還)義務を負う」という規定方法も考えられる。しかし,クレジット会社と販売業者の内部的な不適正与信防止義務の実情は,消費者の立場から解明することはほとんど不可能である。過去の裁判例で加盟店管理責任が問題となった事例は,全国的な被害が発生し刑事事件や破産事件により加盟店管理に関する内部資料が入手できた一部の事例に過ぎない。したがって,消費者の立証を要することなく,抗弁対抗の効果として既払金返還義務を規定すべきである。仮に,不適正与信防止義務違反があった場合に限定するのであれば,クレジット会社の不適正与信防止に関する資料の作成・保管・開示義務を設けることが不可欠の前提である。
        また,現行法30条の4は,自社割賦販売との比較で未払金の支払い拒否を認めたものであり,理論上は既払金返還義務に結びつかないという見解がある。しかし,抗弁対抗規定を導入した1984(昭和59)年に比べ,消費者法における事業者の責任は大きく強化されている。例えば,2001年4月施行の消費者契約法5条は,「事業者が,第三者に対し,消費者契約の締結について媒介することを委託し,委託を受けた第三者が同法4条の不当勧誘を行ったときは,消費者は委託した事業者に対し契約の取消しができる」旨を定めており,効力連動型の処理が消費者法の方向性といえる。また,特定商取引法の平成17年12月6日通達改正は,リース提携販売につきリース会社に対しクーリング・オフが適用されることや,不当勧誘行為による取消ができることを明確化した。これも消費者契約法5条と同様の処理といえる。
        諸外国の法制を見ても,イギリス・フランスは効力を連動させ既払金返還まで認めており,ドイツは法律上は未払金の支払拒絶だけであるが判例法により商品売買契約が公序良俗違反無効や詐欺取消となる場合は既払い金返還まで認めている。
  2. 過剰与信防止義務の実効性確保
    1. 現行法・現行制度
      現行法38条は,購入者の支払能力を超える与信を行わないよう努めなければならない旨既定している。
      クレジット業界の個人信用情報機関シーアイシーは,2002(平成14)年から全件照会・全件登録を自主規制として定めている。
    2. 問題点
      法38条は,違反に対する法的効果が規定されていない訓示規定にとどまる。
      シーアイシーの照会・登録義務の履行状況は,客観的に検証されていない。仮に与信に際し個人信用情報を照会しても,与信するかどうかはクレジット会社の自由裁量とされているため,実際には延滞等の事故情報が登録されていない限り与信を認めるのが実情である。
      クレジット契約書面には,業界団体の標準書式として職業・収入等の記載欄があるが,その欄が記載されていないケースが多いため,既存債務と収入等を比較検討することがそもそも行われていないことが明らかである。
      その結果,最近でも,リフォーム詐欺商法,呉服次々販売被害など,クレジット契約を利用して年金生活者等の支払能力を無視して高額商品を購入させる被害が多発している。
    3. 提言
      • 過剰与信防止義務の具体的基準
        クレジット会社は,個人信用情報機関の照会,消費者の収入及び既存債務の調査等により,消費者の支払能力を超えるクレジット契約の与信を行ってはならないものとし,その具体的な与信基準を法文又は政令に規定すべきである。
        例えば,1業者の与信限度額につき,割賦金の年間支払額が年収の10%を超えないことなどの基準が想定される。
        さらに,既存債務との関係を踏まえた与信限度額の基準も検討すべきである。
      • 過剰与信防止義務違反に対する行政規制
        過剰与信防止義務に違反する与信により,消費者に被害が生じ又は生じる恐れがあるときは,行政規制の対象とすべきである。
        ただし,行政規制だけでは,個別与信行為に対する規制の実効性が上がらないと考えられることから,民事効果を定めることが不可欠である。
      • 過剰与信防止義務違反に対する民事効果
        過剰与信防止義務に違反する与信については,民事効果として,請求権の全部若しくは一部の制限又は既払金の全部又は一部の返還を認めるものとすべきである。
        ただし,クレジット契約を利用した商品購入が,消費者にとって特に必要な商品をあえて積極的に購入する場合もあることから,画一的な効果によって処理するのでなく,柔軟さも必要だと思われる。そこで,上記与信限度額を超える場合,常に請求権制限等の民事効果が生じるものとするのでなく,購入の必要性や支払い財源等を聴取したうえで相当と認めるときは適正な与信と評価する(いわば立証責任の転換),という方法も考えられる。
      • 過剰与信防止に関する関連規定の整備
        過剰与信防止義務の実効性を確保する手段として,?個人信用情報機関の登録義務・照会義務を定めること,?与信審査記録の作成・保存・開示義務を定めること,?個品式クレジット契約書面(法30条の2の2)に消費者の収入・職業等の記載義務を加えること,などを整備すべきである。
        とりわけ,与信審査記録の作成・保存・開示義務は,過剰与信防止義務を履行しているかどうかを事後的にチェックするうえで不可欠である。
  3. 割賦販売法の規制対象範囲の拡大
    1. 現行法
      • 割賦払い要件
        割賦販売・割賦購入あっせんの定義は,1.割賦払い:「2ヶ月以上の期間にわたりかつ,3回以上に分割して,受領するもの」(法2条1項1号,2条3項1号・2号など)と,2.リボルビング払い:「予め定められた時期ごとに,予め定められた方法により算定された金額を受領するもの」(法2条1項2号,2条3項3号など)とされている。
      • 指定商品制
        割賦販売・割賦購入あっせんは,「定型的な条件で販売するのに適する商品であって,政令で定めるもの」(法2条4項)を適用対象としている。
    2. 問題点
      割賦販売法は,クレジット取引の複雑な契約内容や取引構造から生じるトラブルを防止することを目的とした法規制であり,支払回数や取引対象品目による区別は合理性がない。わが国の割賦払い要件は,銀行系クレジット会社が一括払い専用とされ,信販会社が分割払いと一括払いの両方を認めるという参入規制が存在した時代の遺物であり,支払方法による区別が撤廃された現在では無用の要件である。
      悪質販売業者の中には,年金暮らしの高齢者に具体的な支払い予定もないのに半年・1年後の一括払いを勧めて,割賦販売法の規制を逃れる被害事例がある。
      クレジット契約を利用した取引においては,さまざまな商品・サービスが取引対象されており,また一括払いによる取引が多数を占めているが,被害が多発してから追加指定するのは被害の後追いとなり不都合である。これまでにも,ゴルフ会員権,リフォーム工事,エステティックなど,クレジット契約を利用した被害が大量に発生した後に追加指定される弊害を繰り返してきた。
      諸外国の消費者信用法制でも,割賦払い要件や政令指定商品制を採る国は見当たらない。
    3. 提言
      • 割賦払い要件の廃止
        現行法の「2ヶ月以上かつ3回以上の割賦払い」要件を廃止し,1回払いを含む後払い全体を適用対象とすべきである。
         ただし,自社式割賦販売については,代金後払い取引がすべて適用対象となると,規制対象業者が拡散する恐れがあることや,一括後払いの取引は取引の複雑性がそれほど高くないことから,割賦要件を維持することが相当である。
      • 「販売信用」の要件
        後払い取引の範囲(与信期間)については,翌月一括払い(いわゆるマンスリークリア方式)も販売信用の適用対象とすべきである。
      • 政令指定商品制の廃止
        政令指定商品制を廃止し,原則としてすべてのクレジット契約を適用対象とすべきである。
      • 適用除外品目の取扱い
        生鮮食料品,一定金額以下の取引など,法規制に適しない取引については,適用除外規定(ネガティブリスト)を設けることで対処すべきである。
        その場合,適用除外品目の範囲については,詳細に列挙すると適用範囲を分かりにくくすること,諸外国の法制でも限定的な列挙にとどまることなどから,必要最小限度の列挙にとどめるべきである。
  4. 個品割賦購入あっせんに対する規制の整備
    1. 現行法
      総合式及びリボルビング式の割賦購入あっせん業者については,登録制を採用しているが(法31~34条),個品割賦購入あっせん業者については登録制がない。
      個品割賦購入あっせんにおける契約書面交付義務(訪問販売時)は,個品割賦購入あっせんを利用する販売業者が負うだけで(法30条の2の2),個品割賦購入あっせん業者(クレジット会社)には交付義務がない。
      主務省による報告徴収権・立入検査権は,総合式及びリボルビング式割賦購入あっせん業者にはあるが(法40条,41条),個品割賦購入あっせん業者に対しては定められていない。
    2. 問題点
      サラ金が事実上クレジット業務に参入して,加盟店管理責任を無視し,マルチ商法や内職商法などの悪質業者と提携して被害を発生させている。ほかにも,悪質販売業者が,個品割賦購入あっせん専業の子会社を設立することにより,脱法的な与信を繰り返す例もある。
      登録クレジット会社がマルチ商法や内職商法等の悪質販売業者を加盟店から排除しても,サラ金がこうした悪質販売業者と提携することにより,さらに被害が拡大する実情がある。
      契約書面交付義務がクレジット会社にないことから,学習指導付き教材販売や内職・モニター商法などの付随特約型被害(前記第4類型)に関して,クレジット契約書面に特約を記載しないことについてクレジット会社の責任が何ら問われないため,虚偽記載書面が横行している。
      現行法では,個品割賦購入あっせん業者による不適正与信に対して,主務省による行政規制権限も調査権限も全くない。
    3. 提言
      • 登録制の導入
        個品割賦購入あっせん業者について,登録制度を設けるべきである。
        なお,個品式クレジット業者については,総合式に比べ財務要件は緩やかで良いと考える。
      • 書面交付義務の規定
        個品割賦購入あっせん業者に対して,訪問販売時のクレジット契約書面(法30条の2の2)の交付義務を,販売業者と共同責任として義務付けるべきである。実際の交付は,訪問販売業者が代行して交付することとなろう。
      • 契約書面の記載事項
        個品式クレジット契約書面(訪問販売時)の法定記載事項(現行法30条の2の2)について,「商品購入の判断に影響を及ぼす重要な付帯特約事項」の記載義務を追加すべきである。
      • クーリング・オフの規定
        訪問販売時のクレジット契約について,商品販売取引のクーリング・オフ(現行法30条の2の3)とともに,クレジット契約についても法定契約書面交付日から8日間(商品販売契約が20日間であればクレジット契約も20日間)のクーリング・オフを認めるべきである。
        クレジット契約書面の記載不備があれば,クーリング・オフの起算日に影響するものとして,書面交付義務の遵守を図るべきである。この点は,消費者リースに関する特定商取引法の平成17年12月6日通達が参考となる。
      • 行政規制権限
        個品割賦購入あっせん業者の契約書面交付義務,不適正与信防止義務,過剰与信防止義務,登録義務等について,報告徴収権,立入調査権,登録取消等の行政規制の対象とすべきである。さらに,改善指示,業務停止命令等の行政規制権限を加えるべきである(この点は,総合式も含む)。
        個品式クレジット業者に対する行政規制権限を,都道府県にも並存的に付与すべきである。都道府県が訪問販売業者等に対する特定商取引法上の規制権限を行使する際,クレジット会社に対する行政指導等を並行して行使することにより,規制の実効性を高めることとなるからである。
  5. 複数事業者が関与するクレジットカード取引の適正化
    1. 現行法
      総合式及びリボルビング式の割賦購入あっせんの定義は,証票等を利用者に交付することが要件となっていることから(法2条3項1号・3号),消費者にカードを発行するカード会社(イシュアー)は現行法の適用対象事業者といえるが,販売業者と提携するカード会社(アクワイアラー),販売業者をアクワイアラーに取り次ぐ決済代行業者,イシュアーとアクワイアラーをつなぐ国際カードブランド会社,これらから委託を受ける情報処理会社などは,規制対象事業者に当たらない。
    2. 問題点
      クレジットカード取引は,消費者にカードを発行するカード会社(イシュアー),販売業者と提携するカード会社(アクワイアラー),販売業者をアクワイアラーに取り次ぐ決済代行業者,イシュアーとアクワイアラーをつなぐ国際カードブランド会社,これらから委託を受ける情報処理会社など,複数事業者が関与している。モール運営会社や運送会社もカード決済に関与する例がある。
      ところが,詐欺的な出会い系サイト業者が,決済代行業者を通じて大手カード会社のカード決済を利用している被害実例があるうえ,カード会社の請求書には決済代行業者の名称しか記載がなく,実際の利用内容(販売業者名や商品役務の明細)が記載されていないという実情がある。
      また,消費者に直接責任を負わない中間の事業者(情報処理業者や決済代行業者)が,個人信用情報を大量に漏えいする被害事例が発生している。
    3. 提言
      複数事業者か関与するクレジットカード取引においては,消費者に対する不適正与信防止義務,過剰与信防止義務,契約書面交付義務,抗弁の対抗,その他の責任について,カード発行会社が基本的責任を負うことを明確に規定すべきである。
      カード発行会社とその他の関連事業者との間の責任関係は,事業者間の役割分担の問題としてクレジット業界内で自主的に取り決めるべきものであるが,消費者に対する責任の所在は法的に明確化する必要がある。
      現在運用されているチャージバック制度は,事業者間の紛争処理基準にとどまり,消費者に対する権利として明確化されていないことから,消費者に対する責任を明確化することが必要である。
  6. その他の検討事項
    1. 法律の名称
      割賦払い要件の廃止に伴い,「割賦販売法」という法律の名称自体が不適合となるので,例えば「販売信用法」等の名称に変更すべきである。
      将来的には,貸金業を統一した「消費者信用法」を目指すべきであるが,今回は,貸金業については別途検討されており,販売信用の問題に絞った法改正とすることはやむをえない。
    2. 割賦購入あっせんの用語の見直し
      割賦要件の撤廃に伴い,「割賦購入あっせん」の用語自体が不適切となるので,用語の見直しが必要である。
    3. ローン提携販売の規定の廃止又は統合
      割賦購入あっせん(法2条3項)とローン提携販売(法2条2項)は,販売業者が消費者の支払い債務を連帯保証すること以外は取引実態としてほとんど共通であり,かつ法規制の内容もほとんど共通であるから,定義規定の廃止又は統合を検討すべきである。
    4. 割賦手数料と金利規制の統一
      個品割賦購入あっせんの割賦手数料は,割賦払い期間に応じた利息の性質があることを踏まえ,割賦手数料と金利規制の統一を図るべきである 。

以上

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