2007.07.31

陸上自衛隊の市民監視活動に抗議する声明

  1. 2007年6月6日、自衛隊の内部文書により、陸上自衛隊の情報保全隊 は、日常的に市民運動の動向を監視し、その情報を収集・分析していること が明らかになった。
    内部文書は、2003年12月から2004年3月までの間、陸上自衛隊情報保全隊により作成されたもので、自衛隊のイラク派遣反対運動などについて、日時、場所、関係者又は団体、内容等が詳細に記載されている。関係者については市民が実名で記載されており、デモや集会の写真も多数添付されている。
    監視の対象とされたのは全国41都道府県、289団体に及んでいるが、いずれも平和的に行われている市民運動であり、なかには消費税増税反対運動、国民春闘など自衛隊のイラク派遣とは関係ない活動まで含まれている。
  2. しかしながら、「陸上自衛隊情報保全隊に関する訓令」(自衛隊法施行令第 32条に基づき防衛庁長官が定める訓令)によれば、情報保全隊は、自衛隊 内部の情報保全を業務とするものである。自衛隊のイラク派遣反対運動を含 めた市民運動に対する監視や情報収集活動が、その任務たりえないことは明 らかである。
  3. そもそも、政府は主権者である国民の負託を受けて権力を担当するもので あり、政府に対する批判的言論は、民主主義社会の維持発展にとって不可欠 の前提である。国家権力が政府に批判的な市民運動を日常的に監視下におく ことは、民主主義国家においては許されることではない。
    また、国家権力が市民運動の動向を監視しそれを情報として把握することは、そのこと自体がプライバシー権の侵害であるのみならず、集会・結社の自由、表現の自由などに重大な萎縮効果をもたらすもので憲法上許されない。
  4. よって、当会は、政府に対して、陸上自衛隊情報保全隊による市民監視活動を直ちに中止することを強く求める 。

以上

2007年(平成19年)7月31日
埼玉弁護士会 会長  小川 修

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