2007.11.28

公海上自衛隊による補給活動再開のための 「新テロ特措法案」に反対する声明

  1. 政府・与党は、11月13日、海上自衛隊のインド洋における活動を再開するため「テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案」(以下「新テロ特措法案」)の衆議院本会議での採決を強行し、同法案は、参議院に送付された。しかしながら、インド洋での海上自衛隊の補給活動は、それ自体が憲法9条に違反するおそれが強く、当会としては、「新テロ特 措法案」の成立に断固反対する。
  2. 「旧テロ対策特措法」は、2001年に成立し、その後、2003年、2005年、2006年の3回にわたって延長されてきた。同法により、海上自衛隊は,2001年11月以降、インド洋に護衛艦を派遣し、米英軍などの艦船を対象に燃料補給を実施することにより、米国のアフガニスタンでの戦闘行為を支援する兵站活動を行ってきた。日本の海上自衛隊は、「旧テロ対策特措法」によって、戦後はじめて戦闘地域に派兵されたのである。
    米国のアフガニスタンでの戦闘行為は、国際法上の根拠を欠く違法な武力の行使であり、この戦闘行為がもたらしたものは、罪なきアフガニスタンの人々に対する大量殺戮という悲惨な結果であり、戦闘のために復興事業も進まず貧困がますます深刻化している状態である。しかも、米国の戦闘行為はテロ問題を解決するどころかテロの連鎖をもたらしている。いま、アフガニスタンに必要なのは、民族間の和解に向けたプロセスを模索することであり、そのための人道的、平和的な国際貢献である。
    「新テロ特措法案」は、海上自衛隊の活動について、テロリストや武器などの移動を海上で阻止するための「海上阻止活動」に従事する米軍艦などの艦船への給油・給水に限定するとされている。しかし、米国は、「海上阻止活動」を軍事作戦として展開しているのであり、「海上阻止活動」は上記戦闘行為の一環であるから、米軍の戦闘行為支援という特措法の本質は変わっていない。
  3. 憲法9条は、我が国が国際紛争を解決する手段として「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使」を禁じている。米国の戦闘行為に対する海上自衛隊の兵站支援行為は、実質的には米国の「武力の行使」と一体のものであり、憲法9条の禁じる「武力の行使」に該当する可能性が極めて強い。
  4. よって、当会は、インド洋における海上自衛隊の補給活動を再開するための「新テロ特措法案」に断固反対するものである 。

以上

2007年(平成19年)11月28日
埼玉弁護士会 会長  小川 修

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