1993.12.24

死刑執行に対する会長声明

  1. 去る一一月二六日に大阪拘置所、東京拘置所、札幌拘置所で、四名の死刑確定者に対する執行が相次いでなされたことが明らかとなった。これは、本年三月二六日に三名の死刑確定者に対して執行がなされたことに続くものである。
  2. 当会は、本年四月二二日、三月二六日の三名に対する死刑執行について、「市民的政治的権利に関する国際規約」第六条第二項後段、国連経済社会理事会決議の「死刑に直面する者の権利の保護に関する決議」、及び一九八九年一二月国連総会で死刑廃止条約が採択された以降、国内外での死刑制度存続をめぐる議論の高まりを背景に我国でも死刑執行が停止されてきたこと等を理由に、当該死刑執行に重大な憂慮を表明し、法務大臣により一層の配慮と慎重な対応を切望したところである。
    そして、本年三月の死刑執行に際しては、死刑廃止論の立場からのみならず種々の観点から死刑執行について慎重な配慮を求める意見が出され、国民の間に、大きな議論を呼んでいたところでもある。
  3. しかも、九月には大野正男最高裁裁判官が、死刑廃止国が増えている国際動向を踏まえ、判決の補足意見の中で「死刑が残虐な刑罰にあたると評価される余地は著しく増大した」との見解を述べ死刑制度について再検討を促し、更には本年一一月五日に国際人権(自由権)規約委員会が日本政府に、死刑の廃止への措置を勧告した状況にもあった。
  4. 今回の死刑執行は、上記状況を全く考慮されずになされた措置で、誠に遺憾である。
    当会は、死刑制度の是非存廃について、まさしく国民の間で活発な議論が展開される時期にきていると確信するところであり、その議論が尽くされるまで、法務大臣に対し、死刑執行に対し、慎重な対応をされるよう再度強く切望する次第である。

1993年(平成5年)12月24日
埼玉弁護士会会長  坂巻 幸次

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