2008.06.17

死刑執行に関する会長声明

平成20年6月17日、東京拘置所において2名及び大阪拘置所において1名、合計3名もの死刑確定者に対する死刑が執行された。
埼玉弁護士会としては、昨年12月以降の半年余りという極めて短い期間に合計13名もの大量の死刑執行が行われていることに深く憂慮するものである。
当会は、これまで、死刑が執行されるたびに、死刑制度全般に関する情報を公開すること、少なくとも、死刑に直面する人々の権利保障状況等の改善がはかられ、死刑制度の存廃について国民的議論が尽くされるまで、一層の慎重を期して死刑の執行を行わないことなどを求めてきたところであり、今回の執行についても誠に遺憾といわざるを得ない。
死刑制度に関しては、国連総会では、1989年12月、「自由権規約」第二選択議定書(いわゆる死刑廃止条約)を採択した。この死刑廃止条約が採択された翌1990年当時、死刑廃止国は80か国にとどまり,死刑存置国96か国が数で上回っていたが、その後死刑廃止国が着実に増加し、現在では事実上の廃止国33か国を含め死刑廃止国は135か国に上り、死刑存置国62か国の倍以上である。死刑の廃止は、国際的な潮流となっていることが明らかである。
また、国連人権委員会(現在は国連人権理事会)は、1997年4月以降、毎年、「死刑廃止に関する決議」を採択し、その決議の中で、日本などの死刑存置国に対して「死刑に直面するものに対する権利保障を遵守するとともに、死刑の完全な廃止を視野に入れ、死刑執行の停止を考慮するよう求める」との呼びかけを行っている。また,国連の規約人権委員会は、1993年11月及び1998年11月の2回にわたり、日本政府に対して死刑廃止へ向けての措置を取ること及び死刑確定者の処遇を改善することについて勧告している。更に、国連の拷問禁止委員会は、2007年5月、日本政府報告書に対する最終見解を示し、我が国の死刑制度の問題を指摘した上で、死刑の執行を速やかに停止すべきことを勧告した。2007年12月には、国連総会本会議において、すべての死刑存置国に対し死刑執行停止を求める決議が圧倒的多数で採決されてもいるのである。2008年5月の国連人権理事会第2回普遍的定期的審査では、わが国における死刑の執行の継続に対する懸念が多数表明され、政府に対し死刑の執行停止が勧告された。
このような中での今回の死刑執行に対し、当会は、改めて強い抗議の意を表明するとともに、法務大臣に対し、これ以上の死刑を執行することなく、死刑制度の存廃について議論を行うなど当会がこれまで再三にわたって表明してきた死刑制度に関する諸問題について真摯且つ早急に対応することを重ねて求める。

以上

2008年(平成20年)6月17日
埼玉弁護士会 会長  海老原 夕美

戻る