2009.11.10

労働者派遣法の抜本改正を求める声明

  1. 民主・社民・国民新党の3党は、連立政権の成立に際して「労働者派遣法の抜本改正」を政策合意とし、この政策合意をうけて、現在、労働政策審議会が「今後の労働者派遣制度の在り方」を検討している。当会は、これまでにも二度に亘って、「労働者派遣法の抜本改正を求める声明」を発表しているが、今般の政権交代を機にした労働者派遣法改正の機運の高まりを真の意味での「抜本改正」に繋げるために、この問題に関する当会の立場を改めて明らかにする。
  2. 労働者派遣の蔓延が今日わが国で深刻化している「貧困と格差」の主要な原因となっていることはもはや周知の事実である。
    1999年には、経済界からの規制緩和の求めに応じて、派遣労働が原則自由化され、2004年からは、製造工程における派遣労働が解禁されるに至った。派遣労働者の総数は、その後増加の一途を辿り、2007年には321万人を超えている。
    しかし、派遣労働は、雇用が不安定であり、賃金等の労働条件も派遣先の正規労働者と比べて劣悪である。とりわけ、派遣元に登録だけしておいて仕事のあるときだけ派遣元との労働契約が成立する「日雇い派遣」は究極の不安定雇用と言われ、今日の社会問題である「ワーキングプア」(働く貧困層)の温床となっている。
    さらに、2008年11月以降は、金融危機に端を発する経済不況を理由とした製造業における派遣労働者の大量解雇が極めて深刻な社会問題となった。派遣元から解雇されて、仕事を失うとともに、派遣会社の寮からも追い出されて、ホームレスに陥るケースが後を絶たない。2009年正月の「年越し派遣村」(東京・日比谷公園)には、仕事と住居を失った派遣労働者がその救済を求めて約500名も集まった。「年越し派遣村」の実態は、派遣労働者の置かれている悲惨な境遇を如実に示している。
    こうした状況を反映して、厚生労働省が2009年10月に公表した我が国の相対的貧困率(全国民の中で平均所得の半分に満たない人が占める割合)は、15・7%と1997年以降最も高い数値となっている。
  3. 派遣労働の拡大に歯止めをかけ、派遣労働者の労働条件を実効的に向上させるためには、次のような労働者派遣法の改正が不可欠である。
    1. 派遣労働の対象業務は、臨時的かつ専門性の高い業務に限定すること。
    2. 製造業への派遣は禁止すること。
    3. 日雇い派遣は禁止すること。
    4. 登録型派遣は、原則として禁止すること。
    5. 派遣受け入れ期間を1年に制限すること。
    6. 派遣労働者と派遣先正社員との均等待遇を義務づけること。
    7. 派遣労働が1年を超えたとき、あるいは、派遣業者に派遣法違反の行為がある場合には、派遣先企業との正規雇用とみなすこと。
    8. 派遣業者のマージン率の上限規制をすること。
    9. 派遣労働者が所属する労働組合に対する派遣先企業の団交応諾義務を明記すること。
    埼玉弁護士会は、労働者が人間らしく働くための労働のルールを確立し、国民の生存権を守る立場から、上記のような労働者派遣法の抜本改正を強く求めるものである。

以上

2009年(平成21年)11月10日
埼玉弁護士会会長  小出 重義

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