2009.12.22

改正貸金業法の早期完全施行等を求める会長声明

多重債務者が年々増加し(平成17年度には自己破産者が18万人),経済・生活苦での自殺者も年々増加するなかで,同18年12月に改正貸金業法が成立し,出資法の上限金利の引下げ,収入の3分の1を超える過剰貸付契約の禁止(総量規制)などを含む同法が完全施行される予定である。
改正貸金業法成立後,政府は多重債務者対策本部を設置し,同本部は (1)多重債務相談窓口の拡充,(2)セーフティネット貸付の充実,(3)ヤミ金融の撲滅,(4)金融経済教育を柱とする多重債務問題改善プログラムを策定した。そして,官民が連携して多重債務対策に取り組んできた。埼玉県においても,当会及び埼玉県そのほか市町村などが連繋し,多重債務対策協議会や無料相談などを行ってきた。その結果,多重債務者が大幅に減少し,2008年の自己破産者数も全国で13万人を下回り,埼玉県でも自己破産申立件数は大きく減少するなど一定の成果を上げつつある。
しかしながら,一部には,消費者金融の成約率が低下しており,借りたい人が借りられなくなっている,特に昨今の経済危機や一部商工ローン業者の倒産などにより,資金調達が制限された中小企業者の倒産が増加しているなどと殊更強調して,改正貸金業法の完全施行の延期や貸金業者に対する規制の緩和を求める論調があり,政府が貸金業者に向けた規制を緩和する方向で検討するとの報道もなされている。
しかし,このような論調は,1990年代における山一證券,北海道拓殖銀行の破綻などに象徴されるいわゆるバブル崩壊後の経済危機の際に,貸金業者に対する不十分な規制の下に商工ローンや消費者金融が大幅に貸付を伸ばした結果,1998年には自殺者が3万人を超え,自己破産者も10万人を突破するなど多重債務問題が深刻化した事実を無視している。
改正貸金業法の完全施行の先延ばし,金利規制などの貸金業者に対する規制の緩和は,再び自殺者や自己破産者,多重債務者の急増を招くことになる。また中小企業を救済するためと称して,中小企業を苦しめていた高金利業者を復活させるなど本末転倒である。今,多重債務者や中小企業救済のために必要とされる施策は,相談体制の拡充,セーフティネット貸付の充実及びヤミ金融の撲滅などである。
そこで,当会は,政府に対し,貸金業者に対する規制緩和に強く反対の姿勢を表明するとともに,以下の施策を求める。

  1. 改正貸金業法を遅くとも本年12月までに完全施行すること。
  2. 自治体での多重債務相談体制の整備のため相談員の人件費を含む予算を十分確保するなど相談窓口の充実を支援すること。
  3. 個人及び中小事業者向けのセーフティネット貸付をさらに充実させること。
  4. ヤミ金融を徹底的に摘発すること

以上

2009年(平成21年)12月22日
埼玉弁護士会会長  小出 重義

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