2010.05.13

家族法の差別的規定改正の早期実現を求める会長声明

現行家族法は、選択的夫婦別姓を認めず、また婚外子の相続分や再婚禁止期間、婚姻年齢等において、今や合理的とは言えない差別を放置したままとなっている。しかしながら、かかる差別を撤廃するための法改正は、14年前の法制審答申にもかかわらず、現在に至るまで未だ実現していない。
選択的夫婦別姓を認めない現行法制度の下では、婚姻した夫婦の大半において、女性配偶者が改姓を強いられる形となっている。1986年の男女雇用機会均等法の施行、及び1999年の男女共同参画基本法制定を経て、多くの女性が社会内のさまざまな分野に広く進出し、活躍しているが、これらの女性の多くが、別姓が認められないことにより、さまざまな場面において男性が受けないような不便・不利益を未だに蒙っている。このような状況が放置されているのは、前記法の立法趣旨にももとるものである。また、自己のアイデンティティとして婚姻前の氏を使い続けるという考え方を持つ人も増えているが、このようなライフスタイルの選択は、憲法に照らし、十分に尊重されなければならない。
この点、与野党の国会議員の中には、選択的夫婦別姓の許容が、家族や社会の絆を弱めるというような理由で、これを頑強に拒否する向きもあるようである。
しかしながら、このような意見に何らの実証的根拠はなく、言わば感情的な反発と言わざるを得ない。むしろ、2006年の内閣府の調査によると、60歳未満の年齢層では選択的夫婦別姓の導入に賛成するものが反対するものを上回っており、また、2009年9月以降に複数の新聞社により実施された調査ではいずれも、選択的夫婦別姓の導入に賛成の者の数は反対の者の数を上回った。政府及び国会はかような国民の声を真摯に受け止めるべきである。
また、婚外子の相続分差別の撤廃も国際社会の趨勢である。婚外子の相続分差別は、子自身の意思や努力によっていかんともし難い事実をもって差別をするものであり、憲法13条、14条及び24条2項に反することは明らかである。最高裁においても、相続分差別を撤廃すべきであるという個別意見が何度も述べられている。
さらに、女性にのみ課される再婚禁止期間についても、科学技術の発達により男女間に差を設けるべき根拠は既に失われており、婚姻年齢の統一も、今や憲法14条から当然に要請されることである。
1993年以来、国連の各種委員会は日本政府に、家族法改正を勧告し続けてきた。とりわけ2009年女性差別撤廃委員会は、家族法改正を最優先課題として指摘し、2年以内の書面による詳細な報告を求め、再度早期改正を行うよう厳しく勧告している。
埼玉弁護士会は、今国会において、選択的夫婦別姓の導入をはじめ、家族法の差別的規定の改正が速やかに実現されることを強く求める。

以上

2010年(平成22年)5月13日
埼玉弁護士会会長  加村 啓二

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