2011.05.21

東日本大震災の被災者支援に関する総会決議

  1. 本年3月11日、東日本を襲った大地震は、マグニチュード9.0と大規模であっただけでなく、直後に大津波と福島第一原子力発電所の事故が重なったことから前例のない複合型の大災害となっています。
    死亡者と行方不明者は約2万5000人を数え、震災発生後2ヶ月を経過した今も全容が把握できないだけでなく、約12万人の避難者が不自由な避難生活を余儀なくされています。
    この大震災の犠牲となられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた方々に心からのお見舞いを申し上げます。
  2. 当会は、震災直後から、被災者支援のために義援金の募集をするとともに、福島県から「さいたまスーパーアリーナ」に避難された被災者のために、法律相談員を派遣する取り組みを開始しました。現在は、無料電話相談とあわせて、旧騎西高校をはじめ県内各所に避難している被災者に対して定期的な法律相談を行っています。今後も当会は全会を挙げて、被災者に対する必要な支援を行っていく所存です。
  3. ところで、被災地では、住宅、工場・店舗、農地・漁場などが壊滅的な被害を被っています。被災者は、その生活基盤、事業基盤を完全に破壊されており、自助努力のみでの復興が不可能なことは明らかです。こうした状況のもとでは、国の充実した公的支援がなければ、被災者の生活再建を図ることはできません。国は、憲法第13条及び第25条の趣旨に基づき、直ちに被災者の生活再建を図る法の適用及び適切な立法を行う責務があります。
    国は、かかる本来的責務に基づき、被災者の生活再建の土台となる仮設住宅等の住居の確保を急ぐとともに、事業・営業、農業・漁業など事業基盤の再建についても格別の手当てを行うことが強く求められます。そして、仮設住宅の建設などに当たっては、地域コミュニティの崩壊を招かないよう、被災者の実情に応じた柔軟な対策をとることが必要です。
    また、被災者への個人補償である被災者生活再建支援法の適用についても、補償対象を広げ、かつ、その支援金額(上限300万円)の増額を図るべきです。さらに、被災者が新たなローンを抱える「二重ローン」問題についても、被災者の生活再建の見地から、緊急に救済措置を検討し、すみやかに実行すべきです。
  4. 福島第一原子力発電所の事故に関しては、まず何よりも、国と東京電力が国内外のあらゆる関係機関や専門家の協力を得て、原子炉等を安定させ、これ以上の放射性物質の流出を阻止しなければなりません。
    そして、東京電力は、今回の原発事故によって生じたすべての被害を賠償すべきです。原子力損害の賠償に関する法律には、「異常に巨大な天災地変」の場合の免責規定がありますが、従前から、地震・津波によって原発施設の電源が喪失し、炉心溶融に至る危険を指摘されていたのですから、今回の原発事故に関して免責規定が適用される余地がないことはいうまでもありません。
    また、原発事故で原発周辺地から避難を余儀なくされ、いつ自宅に戻れるか分からない住民、放射性物質の飛散により農水産物の出荷制限や風評被害を受けている農漁業者の被害は甚大です。とりわけ、出荷制限・風評被害で収入の途を絶たれている農漁業者への補償金仮払いは喫緊の課題です。国はその責任において、東京電力にこれら農漁業者への仮払いを早急に実行させる必要があります。
  5. 当会は、国に対し、被災者支援のために全力をあげ、英知を結集しあらゆる手段を尽くすことを求めるとともに、当会としても、被災者が一日も早く平穏で安心できる暮らしを取り戻すことができるよう、全力をあげてその支援にあたることを決議いたします。

以上

2011(平成23)年5月21日
埼玉弁護士会定時総会

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