2011.05.30

国民生活センターの在り方の見直しに係るタスクフォース 「中間整理」に対する会長声明

第1 声明の趣旨

国民生活センターの新たな組織形態として、仮に「施設等機関」とするのであれば、支援相談、情報提供、ADRを含む各機能の一体性を確保するとともに、業務の独立性を法律上明記すること、直接相談の復活と商品テスト機能の拡充を図ること、国民生活センターの名称を維持すること、を求める。
仮にこれらが実現できないのであれば、「施設等機関」ではなく、新たな法人のあり方に関する政府の議論を待って再検討すべきである。

第2 声明の理由

  1. 中間整理の要点

    平成23年5月13日に発表された「国民生活センターの在り方の見直しに係るタスクフォース中間整理」(以下,「中間整理」という。)によれば,独立行政法人国民生活センター(以下,「国民生活センター」という。)の各機能を消費者庁に移管して一元化するとしながら,そのうち支援相談,研修,相談処理テスト等は「施設等機関」として位置付ける一方で、情報分析・提供及び商品テストの一部は,消費者庁の内部部局が行うものとしている。また,ADR機能については明確でないが、少なくとも「施設等機関」には位置付けていない。
    この中間整理は、未だ内容について合意されたものではなく、多数の論点が残されているものであって、今後の議論によっては組織のあり方が変わり得るものである。

  2. 中間整理の評価

    情報分析・提供機能は,消費者被害の防止という視点で迅速に遂行されるべきであり、かつ地方自治体における相談処理を適切に実施する情報としても不可欠である。ところが,情報提供部門が相談現場の問題意識から離れて、現行法の解釈・運用や関係省庁との連絡調整を担当する消費者庁が実施することとなれば,相談現場の被害実態に基づく迅速かつ機動的な情報提供機能が低下し、国民・消費者への注意喚起の時期がこれまでよりも遅くなる危険性が高い。
    また,「施設等機関」に置く支援相談・研修等についても,消費者庁の関連部局からの独立性が確保されていなければ,現行法の公権的解釈にこだわらない柔軟な相談処理や研修の推進が停滞することにもなる。
    国民生活センターの情報提供業務や商品テスト業務を担う職員が消費者庁の内部部局に異動することとすれば,消費者庁の機能が一時的に強化されるようにも見えるが、現在の国民生活センターが相談業務を基盤とした一体的・相互補完的な機能を発揮している組織体制を確保しなければ、消費者の目線に立つ専門職員の供給源が失われ、消費者の利益に反することとなろう。

  3. 新組織のあり方

    そこで,国民生活センターの各機能を仮に「施設等機関」として位置付けるのであれば、第1に、情報分析・提供及びADR機能等も含めた一体的組織として位置付けること、第2に、消費者庁の関連部局から独立した業務運営を確保すべきことを法律上明確に定めること,第3に、直接相談業務を復活して消費者被害の実態に直結した業務運営を推進すること、第4に、相談処理テストや商品群テストのニーズに対応できるよう、商品テストの物的・人的体制を強化すること、第5に、40年間の業務を通じて国民に周知され高い信頼を得ている「国民生活センター」の名称を維持することなど、これまで以上の機能が強化されるような組織体制とすることを求める。
    仮に,「施設等機関」の組織体の定義においては,以上のような一体性・独立性が実現できないのであれば,「施設等機関」ではなく、新たな法人のあり方に関する政府の議論を待って再検討すべきである。

  4. 消費者行政全体の強化
    以上のとおり、国民生活センターの新組織が「施設等機関」であれ「新たな法人」であれ、消費者被害の実態に直結した業務運営を遂行できる組織体制を確立することを前提として、(1)新組織の職員を消費者庁のプロパー職員として積極的に採用するなど人事交流と体制強化を図ること、(2)新組織が行う問題提起型情報提供を消費者庁の法執行・政策立案や消費者委員会の建議に活用できるよう情報交換・検討会議等を積極的に推進すること、(3)新組織が行う地方自治体の職員・相談員に対する研修制度を大幅に拡充することなど、国と地方自治体の消費者行政全体の機能強化を図るべきである。

以上

2011(平成23)年5月30日
埼玉弁護士会会長  松本 輝夫

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