2012.08.09

裁判所法の一部を改正する法律案の成立に関する会長声明

本年7月27日、参議院本会議において、司法修習費用に関する裁判所法の一部を改正する法律案が可決・成立した。
本改正法は、現行の「貸与制」を継続したうえで法曹資格取得後などに経済的困窮状態となった場合の返還猶予を認めるものである。しかし、その審理過程において、法曹養成制度の全般的検討の間は「給費制」を暫定的に復活させるという内容の修正案が否決され、貸与制継続を前提とされたことは根本的に問題である。
もっとも、本改正法には、国会審議の中で、(1)1年以内に法曹養成制度について検討を加えて一定の結論を得たうえで速やかに必要な措置を行うこと、(2)法曹養成制度の検討においては、司法修習生に対する適切な経済的支援を行う観点から、法曹養成における司法修習の位置づけを踏まえつつ検討が行われるべきであるとの修正が付加された。また、附帯決議では、司法修習生に対する経済的支援について「必要に応じて適切な措置を講ずること」とされている。また、上記措置の検討対象には、将来の給費制復活及び新65期・66期司法修習生に対する遡及的救済措置も含まれることが国会の質疑の中で明確に確認されている。
そもそも、日本国憲法のもとでの司法の究極的目的・存在意義は、少数者・弱者の人権保障であり,これこそが人権主体たる市民・国民の司法に対する負託であり信頼の根拠なのである。かかる司法制度を担う法曹を養成するには、本来、司法修習生が経済的憂いなく司法修習に専念できることが肝要なはずであり、それを制度的に担保するものが給費制にほかならない。
このような認識のもと当会は、日本弁護士連合会や市民団体とともに、法曹養成過程の中核である司法修習の意義や司法修習生が修習に専念できるための身分保障として長年維持されてきた給費制の意義等を訴え給費制の存続ないし復活を一貫して主張してきたところである。
よって、当会は、政府及び国会に対し、今後改めてなされる法曹養成制度の検討においては給費制の重要な意義を踏まえた審議を経たうえで、速やかに給費制を復活するとともに、それを新65期司法修習生にまで遡って適用することを強く求めるものである。

以上

2012年(平成24年)8月9日
埼玉弁護士会会長  田島 義久

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