2012.10.11

法曹養成制度検討会議和田吉弘委員の意見に関する会長談話

先般,政府の法曹養成制度検討会議の委員である和田吉弘氏(元青山学院法科大学院教授)が同検討会議に提出した本年9月18日付け意見書(以下「本意見書」という)に接した。
同意見書の意見の趣旨は,「司法試験の合格者数を早期に年間1000人程度にすべきである」というものである。まさに,当会の2009年度定時総会において採択された法曹人口問題に関する決議の趣旨と一致している。
本意見書は,その意見の理由として,第一に司法制度改革審議会意見書が「今後(中略)法曹需要は,量的に増大するとともに,質的にますます多様化,高度化することが予想される」としていた点につき,それが実態と大きく異なっていることを挙げる。その中で「司法修習修了者のうちの弁護士未登録者数は(中略)去年の12月の段階で全体の約2割である400人に上る」ことを指摘し,これを,審議会意見書のいう「社会の要請に基づいて市場原理によって決定される」はずの現状の合格者数が過大であることの実証とする。
また,第二に本意見書は法科大学院の深刻な現状を挙げている。2004年度の志願者数に比し今年度のそれが約4分の1であること,今年度は全体の86%である63校で定員割れとなっていることや全体の半数近い35校で入学者が定員の半数に満たない状態となっていること等を指摘し,「現在の法曹養成制度が崩壊しつつある」とまでいう。
このように深刻な法曹養成の実態を踏まえ,本意見書は,「従来の状況からすれば,組織内弁護士を増やす努力や法律扶助制度の予算を増やす努力などをしても,直ちに需要の顕著な増大までは見込めない」と冷徹に分析した結果,「ひとまず合格者を年間1000人程度とすること」を提言する。そしてさらに,「1000人としても,法曹人口は現在の約3万7000人から毎年約500人ずつ増え,平成50年代には5万人を突破することが見込まれる」ことから,「需要に合わせてさらに調整することが必要」とまで言及している。
そして,この間,当会以外でも,本意見書が言及した四国弁護士会連合会や大分県弁護士会だけでなく,中部弁護士会連合会や複数の単位弁護士会等において,本意見書の意見の趣旨と同様の決議が採択されているのである。
よって,当会は,本意見書の意見の趣旨が当会の前記2009年度総会決議と趣旨を同じくする点やその論旨を高く評価するとともに,法曹養成制度検討会議に対し,本意見書の趣旨・論旨がその審議過程において十分に尊重されるよう求める次第である。

以上

2012年(平成24年)10月11日
埼玉弁護士会会長  田島 義久

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