2012.12.19

日弁連会長選挙制度に関する意見書

2012年12月19日
日本弁護士連合会会長  山岸 憲司 殿

埼玉弁護士会会長  田島 義久

第1 意見の趣旨

貴連合会の会長選挙にあたり、いわゆる「単位会3分の1超要件」(日本弁護士連合会会則61条第2項、同61条の2第2項)を廃止することに反対する。

第2 意見の理由

  1. 貴連合会は、平成24年10月25日付「日弁連会長選挙制度の改正について(意見照会)」を単位弁護士会に発し、(1)年度内に新会長を決定できるようにするため再選挙制度を廃止すること、並びに(2)再投票または再々投票において「単位会3分の1超要件」を廃止することの当否を意見照会した。
    これについて当会が会員に対してアンケートを実施した結果については、すでに報告したとおり、「AB案いずれにも賛成できない」という意見が約6割を占めた。
  2. 弁護士法45条は、「全国の弁護士会は、日本弁護士連合会を設立しなければならない」と定め、日本弁護士連合会会則4条は、「本会は、弁護士、弁護士法人及び弁護士会をもって組織する」と規定する。
    つまり、貴連合会は、単に弁護士(弁護士法人を含む)を会員とする組織ではなく、単位弁護士会をも構成員とする団体である。
    したがって、貴連合会会長は、全国の弁護士(弁護士法人を含む)及び弁護士会の代表であり、当該代表にふさわしい選挙制度によって選出されなければならない。現行の会則は、こうした理念を踏まえたうえで、弁護士票の最多得票を基本としつつ、「単位会3分の1超要件」を設けているのである。
    しかるに、仮に再投票または再々投票における「単位会3分の1超要件」を廃止すると、最初からいくつかの大規模単位会の弁護士票を獲得することを目指せば、最終的に単位会の3分の1超における最多得票を確保する必要はないこととなり、本投票で「単位会3分の1超要件」を設けた趣旨を没却することとなる。
  3. この点、貴連合会「会長選挙制度に関するワーキンググループ」の2012年10月10日付け答申は、年度内に新会長が確定されない事態は会務の執行に重大な支障が生じることや、貴連合会の統治能力に対する信頼が損なわれることを強調する。
    たしかに、いつまでも新会長を決定できない事態が継続することは、望ましくないことである。
    また、弁護士票の多数と単位会の多数という異なった価値が拮抗する場合には、最終的には抽選その他適宜の方法によらざるを得ない場合もありうるところである。
    しかし、仮にそうだとしても、再投票または再々投票の時点において「単位会3分の1超要件」を廃止すべきかどうかについては、この要件が設定された沿革等に鑑み、各単位会や諸会員の意見を可能な限り募ったうえで、慎重のうえにも慎重に集約し検討すべきが相当のはずである。
    ところが、貴連合会の平成24年10月25日付意見照会は、こうした点を考慮することなく、再選挙制度及び「単位会3分の1超要件」をいずれも廃止する前提に立つA案及びB案の選択肢しか掲げておらず、極めて誘導的な意見照会の方法と言わざるを得ない。
    そこで、当会で行った会員アンケートでは、公正を期するため、「AB案いずれにも賛成できない」という選択肢を追加して実施したが、その際の添付資料となる貴連合会の意見照会添付資料が誘導的であるため、A案またはB案を回答するほかないと考えた会員も少なくないと思われる。
    したがって、貴連合会において今回の各単位会への意見照会の結果を評価する際は、こうした観点から、より慎重な評価が必要である。
    そして、貴連合会の組織運営の根幹にかかわる会長選挙制度の改正問題であるから、最大限慎重に、かつ、地方単位会の意見に十分配慮した審議と意思形成を求めるものである。

以上

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