2009.11.10

埼玉県内の地裁支部での労働審判実施を求める声明

  1. 2006年4月1日、労働審判手続という個別労使紛争に関する新しい制度がスタートした。この制度は、個別労使紛争に関し、職業裁判官と労働問題の専門家として労使団体から推薦・選任される労働審判員の2名とで組織する労働審判委員会が、事件を審理したうえ、3回の期日内に、調停を試み、又は必要な労働審判を行う手続であり、これにより、労使紛争の実情に即した迅速で適正かつ実効的な解決を目指すものである。
    制度の発足以来すでに3年余りが経過しているが、この制度には、これまでの民事裁判と比較して短期間に審理が行われ、労使紛争の実情に即した柔軟な解決が出来るいう利点があることから、解雇事件や残業代請求事件などに関し、制度の利用者は増大の一途を辿っている。今日、労働審判制度は、労使紛争に関する紛争処理手続として、極めて重要な役割を果たしているといえる。
  2. ところで、労働審判の審理の場所という点をみると、埼玉県においては、さいたま地方裁判所本庁のみで行われている。つまり、埼玉県内の労使紛争について、労働審判を利用しようとすれば、必ずさいたま地方裁判所の本庁に申立てをしなければならないのである。
    しかし、法律上は、地方裁判所に管轄があることを規定しているだけであるから、地方裁判所の支部にも管轄があることは明らかである(労働審判法第2条)。地方裁判所の本庁のみで労働審判を受け付けるという運用は、裁判所の人的・物的な体制の問題に帰着するものであり、これを改善して地裁支部において労働審判制度を実施することは法律の求めるところである。
    もとより、労働審判制度は、それを利用する労働者・使用者のための手続である。新しくできた労働審判制度を利用したいという労働者・使用者にとっては、地裁支部の管轄内の営業所や事業所が労使紛争の場所である場合に、遠距離の本庁まで出向かなければならないというのは著しく不便である。労働審判制度においても、地裁支部における司法サービスが求められることは、通常の民事裁判と何ら変わるところはない。
    実際、さいたま地裁本庁に申立てがなされた労働審判事件のうちには、支部 管内の事件も多数存在しており、地裁支部における労働審判の実施はもはや焦 眉の課題である。
  3. 以上の次第で、当会は、裁判所が早急に体制を整え、埼玉県内の地裁各支部(川越支部、越谷支部、熊谷支部)での労働審判を実施することを強く求めるものである。

以上

2009年(平成21年)11月10日
埼玉弁護士会会長  小出 重義

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