1996.05.25

刑事弁護活動に関する総会決議

日本弁護士連合会は、1989(平成元)年、第32回人権擁護大会(松江市)において、刑事司法の改革を求める「刑事訴訟法40周年宣言」を採択した。わたしたち弁護士は、これに基づき、従前に増して被疑者・被告人の人権に対する責任を自覚し、憲法及び国際人権規約等いわゆる国際人権法の保障する権利を刑事手続きにおいて実現するため、個々の事件処理を通して懸命な努力を継続している。
刑事訴訟の歴史は弁護権拡充の歴史であった、と言われる。弁護人の援助を受ける権利は日本国憲法の保障する基本的人権であり、当番弁護士制度の全国的確立は弁護人の活動範囲を捜査段階にまで及ぼした。
ところで、わが国においては、捜査機関による被疑者に対する取調べに弁護人が立ち会うことは許されず、取調べの経過を録音・録画することも行われていない。このため、密室化した取調室の中で、被疑者に対する捜査官の違法・不当な取調べ、供述調書の偽造・捏造事件が後を絶たない。また、長期の身柄拘束が虚偽の自白調書の作成をもたらし、死刑再審無罪事件4件を含む幾多の冤罪を生み出して来た。こうした状況下にあって、被疑者が取調べに対し弁護人の立ち合いを求め、これが認められない場合に、取調べ拒否や弁護人が確認していない供述調書に署名を拒否することは、被疑者・被告人の憲法に保障された自己負罪拒否特権の行使であり、弁護人がこれを助言することは、取調べの密室性を打破する有効な弁護権行使の方法である。日弁連もまた「刑事司法改革の実現に向けてのアクションプログラム」において、右同様の弁護活動を提言しているのである。
わたしたち弁護士は、憲法公布50年を迎え、憲法上の被疑者・被告人の権利を改めて確認し、また、弁護権の拡充に対する妨害を乗り越え「弁護権拡充の歴史」をさらに推し進めるべく、不退転の決意を持って弁護活動に邁進する覚悟である。

上決議する。

1996年5月25日

埼玉弁護士会

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