2015.04.14

3度に亘り国会に提出された 「労働者派遣法改正案」に反対する会長声明

第1 声明の趣旨

当会は,通常国会に提出された「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案」(以下「労働者派遣法改正案」とする)に対し,派遣労働者の地位を固定化し,更なる非正規社員の増加をもたらすおそれがあること,低賃金・不安定雇用に対する対策が極めて不十分であることから,これに強く反対し,廃案を求める。

第2 声明の理由

  1. 平成27年3月14日,労働者派遣法改正案が閣議決定され,国会に提出された。本来,法の趣旨からして,労働者派遣事業は,常用代替を防止するため,臨時的・一時的な業務に限って認められるものである。しかし,この法案は,当会が執行した「労働政策審議会の『労働者派遣制度の改正について(報告書)』に基づく労働者派遣法の改正に対して強く反対する会長声明」(平成26年2月13日)において,派遣労働者の地位を固定化し,更なる非正規社員の増加をもたらすおそれがあるとして,反対意見を述べたものと実質的に同内容のものとなっている。そこで,本声明において,改めて上記労働者派遣法改正案に対する反対意見を表明するものである。
  2. この間,平成26年には,通常国会・臨時国会の2度に亘り,上記報告書に基づく労働者派遣法改正案が国会に提出されたが,法案における条文の誤りや反対運動の高まりなど受けて,いずれも廃案となった。それにも関わらず,今回の労働者派遣法改正案は,①派遣元で無期雇用されている労働者もしくは60歳以上の労働者に関して,派遣可能期間制限を撤廃する,②3年毎の派遣労働者の入替え,もしくは派遣労働者が所属する組織単位の変更により,派遣先において永続的な派遣労働者の受入が可能となるという大枠は,廃案となった法案から何ら変更されていない。
    低賃金・不安定雇用の解消のための施策に関しても,企業に対して,均衡待遇の努力義務,賃金額等の情報提供義務を課すものに過ぎないこと,雇用安定措置の内容に実効性がないことという本質は全く変わっていない。附則で「均等・均衡処遇の在り方を検討するため,調査研究その他の必要な措置を講ずる」ことを追加した程度の修正では,極めて不十分である。
  3. 上記労働者派遣法改正案は,自ら附則で「正社員と派遣労働者の数の動向等を踏まえ,能力の有効発揮と雇用安定に資する雇用慣行が損なわれるおそれがある場合,速やかに検討を行う」とその危険性を指摘しているとおり,常用代替の防止,派遣労働は臨時的・一時的なものに限るという法の趣旨に反し,派遣労働者の地位を固定化し,更なる非正規社員の増加,正社員の非正規社員への置き換えをもたらすものにほかならない。
    「人をモノ」として扱うことを決して許さず,真に「人間らしい働き方」(ディーセント・ワーク)の実現を求め,登録型派遣・製造業派遣の原則禁止など労働者派遣法の抜本的な改正を求める当会として,上記労働者派遣法改正案は,派遣労働者の地位を固定化し,更なる非正規社員の増加をもたらすおそれがあること,低賃金・不安定雇用に対する対策が極めて不十分であることから,これに強く反対し,3度目の国会審議においても廃案を求める。

以 上

2015(平成27)年4月14日
埼玉弁護士会会長  石河 秀夫

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