2018.05.17

「働き方改革関連法案」に関して「高度プロフェッショナル制度」の削除と徹底 した審議を求める会長談話

2018(平成30)年5月1日、いわゆる働き方改革関連法案が、通常国会で実質的に審議入りした。
同法案は、労働時間規制に関し、いわゆる三六協定でも排除できない罰則付きの労働時間の上限規制を法定化することや、同一労働同一賃金の観点から、不合理な差別を禁止する規定を明確化することなど、「働き方改革」として、労働者の権利に配慮した提案が出されていることに関しては、一定程度評価できる。
しかしながら、検討されている労働時間の上限が労災認定基準にまで達しているなど、問題も多い。
また、同法案は、労働時間の規制強化といいつつも、労働時間の規制緩和として、高度プロフェッショナル制度を一体として組み込んでいる。
同制度は、前記労働時間の上限規制はおろか、深夜労働・休日労働規制の枠すら外してしまうものであり、過労死等防止対策推進法の趣旨からしても、重大な問題を有していると言わざるを得ない。
これまで当会は、「今後の労働時間法制等の在り方について」(報告)に基づく 法制化に対して断固反対する意見書(2015(平成27)年3月19日)、労働 時間規制を緩和する改正法案の廃案を求める会長声明(2016(平成28)年 5月17日)において、高度プロフェッショナル制度の創設及び裁量労働制の拡 大に対して、その危険性を繰り返し指摘し、強く反対の意思を表明してきたところである。
今般、審議入りした「働き方改革関連法案」に対しても、全く同様の批判が当 てはまるものである。
なお、当初は、裁量労働制の拡大という規制緩和制度も法案に入る予定であっ たが、労働時間に関するデータ問題が発覚したことから、今般の法案からは削除 されている。しかしながら、政府は制度導入の方針は変えておらず、当会として も引き続き反対していく姿勢に変わりはない。
以上のとおり、当会としては、いわゆる働き方改革関連法案について、労働者 の生命・身体等を守り、過労死等を無くすために、高度プロフェッショナル制度 の法案からの速やかな削除と、長時間労働の是正という真の「働き方改革」実現 に向け、より実効性のある法改正となるよう徹底した審議が必要であると考える。

2018(平成30)年5月17日
埼玉弁護士会会長 島田 浩孝

戻る