2013.09.19

民法(家族法)の改正を求める会長声明

本年9月4日、最高裁判所大法廷は、婚外子の相続分を婚内子の2分の1とする規定(民法900条4号ただし書前段。以下、「本件規定」という。)について、憲法第14条第1項に違反して無効であると決定した。すなわち、同決定は、「本件規定の合理性については、個人の尊厳と法の下の平等を定める憲法に照らし、嫡出でない子の権利が不当に侵害されているか否かという観点から判断されるべき法的問題であり」、「法律婚という制度自体は日本に定着しているとしても」、本件規定が設けられた1947(昭和22)年の民法改正以降、日本において婚姻や家族の実態が著しく変化、多様化する中で、「婚姻、家族のあり方に対する国民の意識」も変化し、「家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきたことは明らかであ」り、このような認識の変化に伴い、「父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきているものということができ」るとしたうえ、「立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われて」いるとして、上記のとおり、違憲無効と判断したものである。
上記最高裁決定は、これまで本件規定を合憲としてきた最高裁(大法廷1995(平成7)年7月5日決定等)が、本件規定を「個人の尊厳と法の下の平等を定める憲法に照らして」検討、吟味したうえで,従前の判断を変更し、これを明確に違憲と断じたものである。既に当会は、去る2010(平成22)年6月13日、「家族法の差別的規定改正の早期実現を求める会長声明」を発し、同声明内において、婚外子の相続分差別規定等の早期の改正を求めていたものであるが、上記決定は、当会の前記会長声明の趣旨にも沿うものであって、当会はこれを高く評価する。
国連の自由権規約委員会、女性差別撤廃委員会、子どもの権利委員会及び社会権規約委員会は、繰り返し、本件規定についての懸念を表明し、本件規定の廃止について勧告を行ってきた。婚外子と婚内子の平等化を図り差別を撤廃することは国際的潮流であり、本件規定を違憲と判断した今回の最高裁決定は、かかる一連の勧告内容にも沿うものであり、速やかに婚外子と婚内子の平等化が図られるべきである。その際には、「嫡出でない子」ないし「非嫡出子」という差別的な用語も廃止されるべきである。
ところで、日本政府は、自由権規約委員会及び女性差別撤廃委員会から、選択的夫婦別姓を認めていないこと、女性のみに6ヶ月の再婚禁止期間を定めていること、婚姻年齢に男女の差を設けていることについて繰り返し懸念を表明され、民法改正のために早急な対策を講じるよう要請されてきた。そして、法制審議会は、1996(平成8)年に決定した「民法の一部を改正する法律案要綱」において、本件規定を改正して婚外子と婚内子の相続分を同等とすることのほか、男女とも婚姻適齢を満18歳とすること、女性の再婚禁止期間を短縮すること、選択的夫婦別姓を導入すること等、民法における差別的規定の改正を答申していた。また,2010(平成22)年には上記要綱と同旨の法律案が政府により準備されてもいた。しかし、これらに関する民法改正もいまだなされていない。
当会は、かかる違憲決定を契機に、国に対し、速やかに本件規定を改正し、婚外子と婚内子の相続分の平等を民法の条文上も明確にすることを、強く求めるとともに、個人の尊厳と法の下の平等を定める憲法に照らして民法(家族法)全体についての見直しを改めて行い、婚姻適齢に男女の差を設ける民法731条、女性について不合理な再婚禁止期間を定める民法733条、及び夫婦同氏を強制する民法750条についても、速やかに改正することを強く求める。

以上

2013年(平成25年)9月19日
埼玉弁護士会会長  池本 誠司

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