2022.05.03

憲法記念日にあたっての会長談話

 本日、日本国憲法が施行されてから75年目の憲法記念日を迎えました。
 日本国憲法は、国民主権、基本的人権の尊重及び恒久平和主義をその基本理念としており、私たち国民はこれらの基本原理にそって国政が運営されることを求め、それぞれ不断の努力をしてまいりました。

 本年2月24日、ロシア連邦(以下「ロシア」という。)軍がその隣国ウクライナへの軍事侵攻を開始しました。ロシア軍の攻撃により多数の市民を含む死傷者が生じ、また、子どもを含む多くの民間人に対する「戦争犯罪」がなされ、捜査も行われています。国際刑事裁判所(ICC)の主任検察官が現地を訪れ、「罪を犯したと考える合理的な根拠がある」と述べ、本格的な捜査に乗り出す姿勢を示したと報じられます。
 戦争は最大の人権侵害であり、市民に重大な危険と恐怖をもたらし、それが現実にウクライナで起きてしまいました。また、それが今後も続くことが憂慮されます。
 国連憲章は、すべての加盟国に国際関係における武力による威嚇又は武力の行使を慎まなければならないとしているところ(第2条第4項)、今回のロシア連邦による軍事侵攻がこれに違反することは明らかです。戦争の放棄と平和的生存権の尊重を謳う日本国憲法の理念に鑑みても、当会はこの軍事侵攻を強く非難します。
 また、国際社会の外交努力により戦争の惨禍がこれ以上広がらないことを切に願います。

 また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響は世界各地に拡散し、全世界において甚大な被害を生じさせています。日本においても、感染者は750万人を超え、亡くなられた方は3万人に達しようとしています。生活全般に影響が広がり、全国民が自身への感染を心配し、生活不安、事業の継続に対する不安あるいは事業継続の断念などが現実的なものとなっています。
 緊急事態条項やまん延防止条項により、市民や企業には、外出・移動の自粛や休業・時担等が要請されます。しかし、そのような感染拡大防止策を講ずる場合であっても、個人の権利は最大限尊重される必要があります。規制により生活が脅かされたり、事業活動が著しく制約されたりする場合は、速やかに適切な措置を講ずる必要があるとともに、その補償も課題となります。
 また、感染者やその家族、医療従事者等への偏見や差別は決して許されないことに留意する必要があります。
 加えて、ワクチン接種に関して派生する様々な問題についても、きめ細やかに対応していく必要があります。ワクチン接種が強制されたり、接種の有無による差別があってもいけません。

 本日の憲法記念日に際し、まずは一日も早く、ウクライナにおける戦争が終わり、また、日本においても新型コロナウイルス感染症の拡大が終息し、平穏な日常生活が取り戻されることを望みます。
 また、ウクライナへの軍事侵攻を機に、国内の一部からは、安全保障体制の見直し、ことに核廃絶の方向性に反するような動きが出始めています。しかし、日本は、日本国憲法における平和主義の下、非核三原則をゆるぎなく堅持すべき立場にあり、私たちは、日本政府に対し、非人道的な核兵器の廃絶に向けてたゆまぬ努力を続けることを求めます。

以上

2022(令和4)年5月3日
埼玉弁護士会 会長 白鳥 敏男

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