2022.08.12

令和4年司法試験に関し厳正な合否判定を求める会長声明

  1.  法曹志願者数の推移をみると、法科大学院志願者数については、ピーク時に72,800人(平成16年度)であったところ、令和4年度は前年度の8,341人から増加しているものの10,633人となっており、また、司法試験出願者数(旧司法試験の廃止後)については、ピーク時に11,892人(平成23年)であったが、令和4年は3,082人となっているのであって、法曹志願者が激減しているというべき状況にある(なお、令和4年度法科大学院入学者数は1,968人に過ぎない)。
     一方、司法試験の最終合格者数は、平成24年に2,102人であった後から平成29年に1,543人、平成30年に1,525人、令和元年に1,502人と漸減の傾向にあり、令和2年には1,450人、令和3年には1,421人と政府が目標として掲げていた1,500人を2年連続下回ったものの、合格率でみたときには、令和元年は33.6%(対受験者数比。以下同じ。)、令和2年には39.1%、令和3年には41.5%まで高まっており、1,500人程度の最終合格者数を維持するべく、合格最低点を調整し、合格者数を調整しているのではないかとの疑いを持たれてもやむを得ないところである。

  2.  法曹養成制度改革推進会議は、平成27年6月30日、「法曹人口の在り方について(検討結果取りまとめ)」において、司法試験の合格者数につき年間1,500人程度は輩出すべきとする方針を決定した。仮に、令和3年と同水準の最終合格者数が維持された場合には、令和4年の司法試験の受験者数3,082人に対する合格率は、46.1%にまで跳ね上がることとなる。万が一、1,500人程度の合格者数を維持するために合格ラインが下げられるようなことがあれば、司法試験の選抜機能が大きく損なわれ、合格者の質を制度的に担保できない事態となることは自明である。法曹養成制度改革推進会議の上記「検討結果取りまとめ」が、司法試験合格者数は「輩出される法曹の質の確保を考慮せずに達成されるべきものでないことに留意する必要がある」とも述べていることに注目する必要がある。

  3.  当会は、平成27年11月26日の臨時総会において「司法試験合格者を年間700人程度とするよう求める決議」をした。その後、平成29年、平成30年、及び令和元年の司法試験に関し、厳正な合否判定を強く求める会長声明を発した。また、同試験の最終合格者数の発表を受けて、多人数の合格者としたことに強く抗議の意思を表明する会長談話をも発した。
     今年も司法試験の最終合格者数が令和3年の水準が維持された場合、合格者数を700人程度に減員すべきとの総会決議をしている当会としては、とうてい容認できない。

  4.  そもそも、司法試験法1条は、「司法試験は、裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家試験」であるとしている。
     そうであれば、最終合格者数1,500人維持が目的となってはならないのであり、司法試験法と「検討結果取りまとめ」にいう「質の確保」に鑑み、司法試験委員会は厳正な合否判定を行う責務を負っている。

  5.  当会は、「質の確保」を保持するため、司法試験委員会が厳正な合否判定を行うことを強く求めるものである。

以上

2022(令和4)年8月12日
埼玉弁護士会 会長 白鳥 敏男

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