2022.11.09

「谷間世代」への一律給付を求める会長声明

 司法修習生に対する給費制が2011(平成23)年に廃止されたことで、新65期以降、司法修習生は修習専念義務や守秘義務を負いながらも無給で司法修習を受けざるをえない状態とされた。
 そのわずか6年後の2017(平成29)年4月19日、裁判所法の再改正がなされた。同年11月採用の71期司法修習生から、基本給付月額13万5000円と、十分とは言い難いものの修習給付金を国が支給することになった。
 このような短期間での裁判所法の再改正は、給費制廃止の弊害が大きかったことを明らかにするものである。
 また、給費制廃止から修習給付金制度創設の間に位置する新65期から70期までの司法修習生(いわゆる「谷間世代」)は、同じ司法修習生でありながら、司法修習の時期によって不平等な状態に置かれている。この事実を看過して、国が目指している強い司法を実現することは困難であることから、当会は、2018(平成30)年2月19日、『「谷間世代」に対する不平等の是正を求める会長声明』、2019(平成31)年3月6日、「国に対し、早期に貸与制世代への不公平是正を求める会長談話」を発表した。①「谷間世代」に対する一律給付などの方法によって、不平等を是正すること、②上記是正措置が講じられるまでの間、貸与金の返還期限を一律猶予する措置を講ずること、という2点の措置の早期実現を求めてきた。にもかかわらず、「谷間世代」に対する不平等は、国によっては何ら是正されない状態が継続している。
 当会は、独自の是正措置として、2019(平成31)年2月26日、当会の臨時総会において、「谷間世代」に対し、不十分ながらも会員の会費負担による財政支援措置を可決し、実施した。
 このことは、当会が、「谷間世代」の当会会員が抱える貸与金の返済等の負担が少しでも軽減され、基本的人権を擁護し、社会正義の実現に向けた職務の遂行に資するためにも、法曹の一翼を担う弁護士集団として可能な範囲で不平等の是正措置を講じることが必要であると考えたことによるものである。
 しかしながら、弁護士会における支援には限界があるとともに、「谷間世代」が存在する問題は、単なる個人の資格取得の問題ではなく、司法制度の人的基盤の確保と国民の権利の守り手を育てる国民的課題に関する国の立法政策上の歪みである。すなわち、当会に所属する会員弁護士のみならず、裁判官、検察官も含めた国の三権の1つである司法を担う法曹全体の問題として、本来、国がその是正措置を講ずべきであることは明らかである。
 よって、当会は、「谷間世代」に対する不平等の抜本的な是正を行うためにも、国による一律給付金の実施を実現するよう求めるものである。

以上

2022(令和4)年11月9日
埼玉弁護士会 会長 白鳥 敏男

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