会長声明および決議書・意見書
2024.12.17
子どもの権利条約に基づく子どもの権利保障の推進を求める会長声明
今年、1989年11月20日に国連総会で子どもの権利条約が採択されてから35年、1994年4月22日に日本が条約を批准してから30年が経過しました。子どもの権利条約によって、子どもは単なる保護の対象ではなく、自己決定権を有する権利の主体であると捉えられるようになってきました。
日本が子どもの権利条約に批准した当時、日本国内では、子どもの権利条約が定める子どもの権利が十分に保障されているとはいえない状況でした。そのような中、近年、2020年には児童虐待の防止等に関する法律などの改正によって「しつけ」名目での体罰が全面的に禁止され、2022年の民法改正では、親権者の子どもに対する懲戒権が削除されるとともに、子どもの人格を尊重することが求められ、同年の児童福祉法改正では、社会的養護下にある子どもの意見表明支援が立法化されました。2023年には、子どもの権利条約の一般的な原則をこども施策の基本方針とするこども基本法が施行され、こども施策の司令塔であるこども家庭庁が設立されました。子どもの権利条約の一般的な原則が国内法にも示されたことは、子どもの権利保障が実現される社会に向けた大きな一歩となったといえます。
しかしながら、現在においても、子どもたちを取り巻く状況は非常に厳しく、自死者数、児童相談所の虐待相談対応件数、いじめ重大事態件数、不登校児童生徒数などいずれも過去最多の水準が続いていますから、家庭でも、学校でも、子どもの権利が保障されているといえる状況ではありません。
子どもの権利が保障される社会の実現には、子どもの権利条約に基づき、権利を有する子どもと共に、子どもの権利を保障する義務をもつ大人が、子どもの権利を学び、理解しなければなりません。保護者を含む全ての大人に対して子どもの権利に関する啓発を行い、特に、教職員、児童福祉施設職員、裁判官、弁護士、議員及び公務員など、子どものために働く者に対して定期的に研修がなされることで、子どもの権利が保障される社会の構築に向けて歩みを進めていく必要があります。
当会は、子どもの権利保障をするために、今後も、子どもの権利の普及啓発活動、さらに子どもの手続代理人及び付添人活動などの諸活動を通じて、子どもの権利が保障される社会の実現に向けて取り組むことを表明するとともに、より多くの大人が子どもに関する事柄を決めるあらゆる場面で子どもの最善の利益を主たる考慮要素とし、子どもに意見表明の機会を与えることが、子どもの権利の実現のために必要不可欠であることを学び、理解するよう、子どもの権利保障の推進に尽力していくことをここに表明します。
以上
2024(令和6)年12月11日
埼玉弁護士会 会長 大塚 信雄