会長声明および決議書・意見書
2024.12.18
日本被団協のノーベル平和賞受賞にあたっての会長談話
本年10月11日、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞が発表され、先日の12月10日にノルウェー・オスロにおいてその授賞式が行われました。
授賞式で、日本被団協代表委員の一人である田中煕巳さんは、自身の被爆体験や親族の死、広島・長崎両市の21万人前後にも及ぶ原爆投下年末までの死者、生き残った40万人余りと推定される被爆者たちの孤独と病苦・生活苦、その後の偏見と差別の苦しみなどを語りました。そして、「日本政府は一貫して国家補償を拒み、放射線被害に限定した対策のみを今日まで続け」、「原爆で亡くなった死者に対する償いは日本政府は全くしていない」ことを強調しました。
ノルウェー・ノーベル委員会は、日本被団協の受賞理由として、1945年8月の原爆投下を受けて、核兵器使用がもたらす破滅的な人道的結末に対する認識を高める運動を続け、核の使用は道義的に許されないという強力な国際規範(「核のタブー」)が生れたことをあげています。
もっとも、上記演説において田中さんは、「今日、依然として1万2000発の核弾頭が地球上に存在し、4000発が即座に発射可能に配備されている中で、ウクライナ戦争における核超大国ロシアによる核の威嚇、また、パレスチナ自治区ガザ地区に対しイスラエルが執拗な攻撃を続ける中で核兵器の使用を口にする閣僚が現れるなど、市民の犠牲に加えて『核のタブー』が壊されようとしていることに限りない口惜しさと憤りを覚えます」とも述べておられます。そのうえで、最後に「『核兵器禁止条約』のさらなる普遍化と核兵器廃絶の国際条約の策定を目指し」、「人類が核兵器で自滅することのないように。核兵器も戦争もない世界の人間社会を求めて共に頑張りましょう」と世界に訴えかけました。
しかし、日本は唯一の戦争被爆国で、日本国憲法前文・9条により非軍事平和主義が憲法理念であるにもかかわらず、日本政府は、「核兵器禁止条約」に署名しておらず、締約国会議へのオブザーバー参加すらしていません。改めて、上記演説で田中さんが訴えておられた「核兵器と人類は共存できない、共存させてはならないという信念」を私たちも共に強く持ち、そのための諸活動を継続していくことの重要性を再認識しなければなりません。
以上から、日本被団協のノーベル平和賞受賞を受け、その長年にわたり新しい世代に自らの体験とメッセージを伝え続けてきた努力に心より敬意を表するとともに、当会は、日本政府に対し、核兵器廃絶と原爆被害に対する国家補償が課題として残っていることを認識したうえ、来年開催予定の核兵器禁止条約締結国会議に参加し、速やかに核兵器禁止条約を批准して核兵器廃絶に向けて取り組むことを求めます。
以上
2024(令和6)年12月16日
埼玉弁護士会 会長 大塚 信雄