2020.11.24

令和2年司法試験に関し厳正な合否判定を求める会長声明

  1. 法曹志願者数の推移をみると、法科大学院志願者数については、ピーク時に72,800人(平成16年度)であったところ、令和2年度は8,161人となっており、また、司法試験出願者数(旧司法試験の廃止後)については、ピーク時に11,892人(平成23年)であったが、令和2年は4,226人となっているのであって、法曹志願者が激減しているというべき状況にある(なお、令和2年度法科大学院入学者数は1,711人に過ぎない)。
    一方、司法試験の最終合格者数は、平成24年に2,102人であった後から漸減の傾向にあるものの、平成29年に1,543人、平成30年に1,525人、令和元年に1,502人であり、いまだに1,500人台を維持している。
  2. 法曹養成制度改革推進会議は、平成27年6月30日、「法曹人口の在り方について(検討結果取りまとめ)」において、司法試験の合格者数につき年間1,500人程度は輩出すべきとする方針を決定した。これによれば、司法試験受験者数が減少している中で、政府が上記方針に固執して、今年も最終合格者数1,500人を維持するのではないかという懸念もある。万が一、1,500人維持のために合格ラインが下げられるようなことがあれば、司法試験の選抜機能が大きく損なわれ、合格者の質を制度的に担保できない事態となることは自明である。法曹養成制度改革推進会議の上記「検討結果取りまとめ」が、司法試験合格者数は「輩出される法曹の質の確保を考慮せずに達成されるべきものでないことに留意する必要がある」とも述べていることに注目する必要がある。
  3. 当会は、平成27年11月26日の臨時総会において「司法試験合格者を年間700人程度とするよう求める決議」をした。その後、平成29年、平成30年、及び令和元年の司法試験に関し、厳正な合否判定を強く求める会長声明を発した。また、同試験の最終合格者数の発表を受けて、多人数の合格者としたことに強く抗議の意思を表明する会長談話をも発した。
    今年も司法試験の最終合格者数1,500人が維持された場合、合格者数を700人程度に減員すべきとの総会決議をしている当会としては、とうてい容認できず、何よりもその決議を裏付けた合格者数激増による様々な歪みと弊害を放置することになり、看過できない。
  4. そもそも、司法試験法1条は、「司法試験は、裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家試験」であるとしている。
    そうであれば、最終合格者数1,500人維持が目的となってはならないのであり、司法試験法と「検討結果取りまとめ」にいう「質の確保」に鑑み、司法試験委員会は厳正な合否判定を行う責務を負っている。
  5. 当会は、「質の確保」を保持するため、司法試験委員会が厳正な合否判定を行うことを強く求めるものである。

以 上

2020(令和2)年11月24日
埼玉弁護士会会長  野崎 正

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