2017.08.09

平成29年司法試験に関し厳正な合否判定を求める会長声明

  1. 法曹志願者数の推移をみると、法科大学院志願者数については、ピーク時に72、8 00人(平成16年度)であったところ、平成29年度は8、159人となっており、 また、司法試験出願者数(旧司法試験の廃止後)については、ピーク時に11、892 人(平成23年)であったが、平成29年は6、716人となっているのであって、法 曹志願者が激減しているというべき状況にある(なお、平成29年度法科大学院入学者 数は1、704人に過ぎない)。司法試験出願者数は、平成28年には7、730人であ ったから、前年比にすると86%にまで減少しており、減少傾向に歯止めがかからない 状況である。
  2. 一方、司法試験の最終合格者数は、平成27年に1、850人、平成28年に1、5 83人と減少しており、出願者数の減少傾向に合わせて合格者数も減少させてきている ようにも見える。
  3. 法曹養成制度改革推進会議は、平成27年6月30日、「法曹人口の在り方について(検 討結果取りまとめ)」において、司法試験の合格者数につき年間1、500人程度は輩出 すべきとする方針を決定した。これによれば、司法試験受験者数と最終合格者数がとも に減少している中で、政府が上記方針に固執して、今年も最終合格者数1、500人を 維持するのではないかという懸念もある。万が一、1、500人維持のために合格ライ ンが下げられるようなことがあれば、司法試験の選抜機能が大きく損なわれ、合格者の 質を制度的に担保できない事態となることは自明である。法曹養成制度改革推進会議の 上記「検討結果取りまとめ」が、司法試験合格者数は「輩出される法曹の質の確保を考 慮せずに達成されるべきものでないことに留意する必要がある」とも述べていることに 注目する必要がある。
  4. 当会は、平成27年11月26日の臨時総会において「司法試験合格者を年間700 人程度とするよう求める決議」をし、その後、平成28年の最終合格者数の発表を受け て、多人数の合格者としたことに抗議の意志を表明する会長談話を発した。
    今年も司法試験の最終合格者数1、500人が維持された場合、合格者数を700人 程度に減員すべきとの総会決議をしている当会としては、とうてい容認できず、何より もその決議を裏付けた合格者数激増による様々な歪みと弊害を放置することになり、看 過できない。
  5. そもそも、司法試験法1条は、「司法試験は、裁判官、検察官又は弁護士となろうとす る者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家 試験」であるとしている。
    そうであれば、最終合格者数1、500人維持が目的となってはならないのであり、司 法試験法と「検討結果取りまとめ」にいう「質の確保」に鑑み、 司法試験委員会は厳正 な合否判定を行う責務を負っている。
  6. 当会は、「質の確保」を保持するため、司法試験委員会が厳正な合否判定を行うことを強く求めるものである。

以 上

2017(平成29)年8月9日
埼玉弁護士会会長  山下 茂

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