2017.04.20

裁判所法の一部を改正する法律の成立に関する会長談話

2017(平成29)年4月19日,司法修習生に対する費用の支給に関し,裁判所法の一部を改正する法律(以下「本改正法」という。)が可決され,成立した。
本改正法は,司法修習生に対する現在の貸与制を改め,2017(平成29)年11月1日以降に採用される司法修習生(第71期以降)に対し新たな給付制度を創設し,修習給付金として一定の費用(基本給付金,住居給付金,移転給付金)を給付することを内容とするものである。
2011(平成23)年に司法修習生に対する給費制が廃止され,修習資金を貸与する制度に移行してから,5年が経過した。そもそも司法修習制度は,三権の一翼を担う司法における人材養成の根幹をなすものであるから,その制度負担は,本来私費負担とすべきものではない。貸与制を前提とした司法修習制度は,司法修習時における債務負担の重圧が法曹を志す者の意欲を減退させ,就職難とも相まって法曹志願者減少の大きな要因ともなるものである。
当会は,日本弁護士連合会や市民団体とともに,経済的困窮を理由に法曹志願者がその道を閉ざされることがないよう,また,市民の権利擁護を担う人材を国が責任を持って育てるため,司法修習生に対する給費制の維持・復活を強く求めてきた。
この間,多くの国会議員から,司法修習生への経済的支援の創設に賛同するメッセージが寄せられ,また,国民からも多数の署名が寄せられるなど,新たな経済的支援策の実現を求める声が高まっていた。そのような状況を踏まえ,今回,司法修習生に対して新たな給付制度を創設したことは,高く評価できる。ただし,給付額に関しては,司法修習生が修習に専念できる経済的基盤として十分であるのか,給付開始後速やかに検証のうえ早期の見直しを求める。
さらに,本改正法では,貸与制のもとで採用された新第65期から第70期の修習生に対しては何ら対策がなされておらず,修習に対して一定の費用が給付されていた期の司法修習生との間に不公平な結果が生じている。このような不公平を是正するためにも,新第65期から第70期の司法修習生に対しても遡及的に経済的な支援策が講じられるよう,引き続き真摯な議論を要請する。
当会は,真に公平・公正で質の高い法曹養成制度の実現に向けて,引き続き,取り組む所存である。

以 上

2017(平成29)年4月20日
埼玉弁護士会会長  山下 茂

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