2020.05.14

修習資金の貸与を受けた元司法修習生に対する返還猶予を求める緊急声明

令和2年5月14日
埼玉弁護士会会長  野崎 正

  1. 現在、新型コロナウィルス感染防止対策として全国に緊急事態宣言が発令され、食品販売等一部の業務を除いて事業活動全般に休業要請が出されている。
    裁判所においても、刑事事件等緊急性を要する一部の事件を除いて裁判期日が延期扱いとされており進行せず、また、面談での新件法律相談の機会も減少しており、このような状況に伴いほとんどの弁護士業務も事実上休業状態である。
  2. こうした中で、司法修習生に対する修習資金(以下、「貸与金」という。)の貸与を受けた世代(新65期~67期)は、貸与金の返還が始まっており、本年度分は本年7月25日にその返還期限が迫っている(平成29年最高裁判所規則第4号による改正前の司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則第7条、修習資金貸与要綱第16条第1項)。
    しかし、本年度返還対象となっている、弁護士業務に就いて5年~7年しか経過していない貸与制世代の若手弁護士は、今般の緊急事態宣言の影響により事実上弁護士業務が休業状態に追い込まれており、貸与金の返還を履行することは著しく困難な状況にある。
  3. 貸与金の返還については、平成29年法律第23号による改正前の裁判所法第67条の2第3項において、一定の場合には最高裁判所が返還期限を猶予することができる旨が定められており、新型コロナウィルス感染防止対策に伴う収入減は「災害、傷病その他やむを得ない理由により返還することが困難となった場合」にあたる。
    また、貸与金の返還期限の猶予を求める場合の申請期限は、原則として当年の5月31日までとされており、提出期限経過後の申請も可能であるが返還期限後に猶予申請が承認された場合には返還期限の翌日から猶予申請が承認される日までの間について延滞金(年14.5%)が発生するとされている(最高裁判所HP)。緊急事態宣言の発令が4月7日であったことに鑑みれば、申請のための期限は極めて短く、期限内の対応は困難である。
  4. 緊急事態宣言に伴う国民生活の困窮・混乱が拡大し、とりわけ社会的弱者に対する法的サービスを担う弁護士の活動が今後一層重要になることが見込まれる現状において、若手弁護士が旺盛に活動できる基盤を確保することは、我が国の司法制度の喫緊の課題でもある。
  5. よって、当会は、国に対し、貸与金の返還義務者に対する本年度の返還猶予について、大至急の対応を求める。

以 上

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