2019.03.06

国に対し,早期に貸与制世代への不公平是正を求める会長談話

司法修習生に対する給費制が2011(平成23)年に廃止されたことで,新65期以降,司法修習生は修習専念義務や守秘義務を負いながらも無給で司法修習を受けざるをえない状態とされた。その6年後の2017(平成29)年4月19日,裁判所法の再改正がなされ,同年11月採用の71期司法修習生から,必ずしも十分とは言い難いものの修習給付金を国が支給することになった。
このような裁判所法の改正は,給費制廃止の弊害が大きかったことによるものであり,その間,当会においても給費制の復活に向けた世論形成の活動を行ってきたものである。
また,給費制廃止から修習給付金制度創設の間に位置する新65期から70期までの司法修習生(いわゆる「貸与制世代」)に関し,同じ司法修習生でありながら,司法修習の時期によって不平等な状態に置かれた者がいるという事実を看過して,国が目指している強い司法を実現することは困難であることから,当会は,2018(平成30)年2月19日,『「谷間世代」に対する不平等の是正を求める会長声明』にて,①最高裁判所,政府・法務省,衆参両院はじめ関係各位に対し,新65期から70期の司法修習終了者に対する一律給付などの方法によって,谷間世代に対する不平等を是正すること,②谷間世代は無給であったため,貸与金(国からの貸付金)を借りた者も多いが,同年7月25日から新65期の貸与金返還が開始するため,同日までに上記是正措置が講じられない場合は,上記是正措置が講じられるまでの間,貸与金の返還期限を一律猶予する措置を講ずることを求めてきた(同会長声明における「谷間世代」と「貸与制世代」は同義)。
それにもかかわらず,かかる「貸与制世代」に対する不平等は,何ら是正されない状態が継続し,その審議・検討においてすらなされる目途が見えていない。
そのため,2019(平成31)年2月26日,当会の臨時総会にて,「貸与制世代」に対し,会員の負担により,71期以降の前記修習給付金の金額には至らないながらも財政支援措置を可決したものである。
このことは,当会が,このような不平等を看過することは受け入れがたいとともに,「貸与制世代」の当会会員が抱える貸与金の返済等の負担が少しでも軽減され,基本的人権を擁護し,社会正義の実現に向けた職務の遂行に資するためにも,法曹の一翼を担う弁護士集団として財政的に可能な範囲で不平等の是正策を講じることが必要であると考えたことによるものである。
しかしながら,弁護士会における支援には限界があるとともに,「貸与制世代」に対する問題は,単なる個人の資格取得の問題ではなく,司法制度の人的基盤の確保と国民の権利の守り手を育てる国民的課題に関する国の立法政策上のゆがみである。すなわち,弁護士のみならず,裁判官,検察官も含めた国の三権の1つである司法を担う法曹全体の問題として,本来,国がその是正対策をすべきであることは明らかである。
よって,当会は,「貸与制世代」に対する不平等の抜本的な是正をするためにも,最高裁判所,政府・法務省,衆参両院はじめ関係各位に対し,新65期から70期の司法修習終了者に対する上記是正措置をするよう一層働きかけを行う所存である。

2019年3月6日
埼玉弁護士会会長  島田 浩孝

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