1997.07.17

神戸小学生殺人事件の少年事件報道に対する会長声明

本年五月神戸市内で発生した小学生殺人事件について、六月二八日、神戸市内の少年が被疑者として逮捕され、現在警察による取調が進行している。
無罪の推定を受ける被疑者に対しては、慎重な報道が求められ、本件のように少年の場合、とりわけ慎重かつ特別の配慮がなされなければならず、事件の特異性などからする興味本位な報道は、厳に慎まなければならない。
ところが、七月二日発売された新潮社発行の写真週刊誌は、少年の顔写真を大きく掲載し、七月三日発売された同社発行の週刊誌も目隠し付きの写真とともに、少年の特定につながる家庭環境などに関連する記事を掲載した。
少年の健全育成を目的とする少年法は、第二二条二項で少年審判を非公開としている。また、同法第六一条において、家庭裁判所の審判に付された少年について、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等により、その者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を出版物に掲載することを禁じ、この規定は審判に付される前の捜査段階にも適用されると解されている。
新潮社の報道は、この少年法に背き、同法の精神を踏みにじるものであって、断じて容認できない。また、国民の知る権利の観点からしても、このような報道を行う合理性は微塵も無い。
当会は、少年の人権を著しく侵害した新潮社の報道に対し、強く抗議するとともに、今後同社及びそのほかの報道機関が少年や家族など事件関係者の人権に配慮し、少年法の精神にそった慎重な報道をされるよう強く要望する。

以上

1997(平成9)年7月17日
埼玉弁護士会会長  北條 神一郎

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