1998.11.10

実効性ある情報公開法の早期制定を求める声明

国の政治は国民から付託されたものである。したがって、国の保有する情報を知ることは国民の当然の権利である(知る権利)。そしてまた、国の情報公開は、国民の政治参加と監視にとって欠くことのできない重要な手段である。この間の厚生省によるエイズ研究班会議議事録テープ隠蔽の発覚、防衛庁幹部の装備調達をめぐる背任事件の発覚、あとを絶たない政財官界の汚職事件、巨額の公的資金の投入等の社会情勢を考えるとき、情報公開法の制定が急がれる。11月末に召集される予定の臨時国会では、ようやく、継続審議となっていた情報公開法の成立へ向けて審議が行なわれる可能性が高い。

しかしながら、国会に上程されている情報公開法案には、

  • 目的規定に「知る権利」が明記されていない
  • 地方に裁判管轄を認めていない
  • 特殊法人を対象としていない
  • 不開示情報の範囲が広範である

等情報公開を実効的に保障するうえでの問題点がある。

とりわけ、地方に裁判管轄を認めていない点は、情報公開の根幹にかかわる極めて重大な問題である。なぜなら、地方在住者の司法的救済が事実上制限されることになり、その結果、真に「国民による行政の監視・参加の充実に資する」という情報公開法の目的は画餅に帰するからである。地方在住者も国の情報に十分アクセスできるように各地方裁判所での情報公開裁判の提起ができるような管轄の規定を置くこと、国民の誰もが国の情報に気軽にアクセスできるように手数料を無償もしくは低廉にする規定を置くことが、真に国民のための情報公開法にするために必要不可欠である。
当会は、これまでも、とくに地方の住民の声を反映した情報公開法の早期制定に向け運動に取り組んできたが、次期臨時国会で是非とも法案を成立させるべく取り組みを強化するとともに、次期臨時国会においては、上に指摘した点につき十分な審議を行ない、真の意味での国民のための実効性ある情報公開法が制定されるよう強く求めるものである。

以上

1998(平成10)年11月10日
埼玉弁護士会会長  細田 初男

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