2002.09.25

死刑執行に関する会長声明

法務省は9月18日、福岡拘置所で1名、名古屋拘置所で1名の死刑確定者に対して死刑の執行を行った旨発表した。今回の死刑執行は昨年12月27日の2名の執行に続くもので、1993年に死刑の執行が再開されて以来9年の間の被執行者数は43名に達している。

死刑については、死刑廃止論条約が1989年12月国連総会で採択されて91年に発効しているほか、国連人権委員会は1997年以降毎年「死刑廃止に関する決議」を行い、その決議の中で日本などの死刑存置国に対して「死刑に直面する者に対する権利保障を遵守するとともに、死刑の完全な廃止を視野に入れ、死刑執行の停止を考慮するよう求める。」旨呼びかけている。更に国際人権(自由権)規約委員会は、1993年と1998年の二度にわたって、日本政府に対して死刑廃止へ向けての措置をとることおよび死刑確定者の処遇を改善すること等について勧告を出している。

また、欧州評議会は、2001年6月、アメリカと日本に対し死刑の執行の一時停止を行い、早急に死刑制度を廃止するよう促す旨の決議を採択し、2003年1月1日までに死刑廃止について明かな進展がない場合、アメリカと日本がオブザーバー資格を維持することについて異議を唱えるとした。また、2002年6月には、欧州会議において、日本、韓国、台湾における死刑廃止に関する決議が採択され、早急に死刑を廃止するか、もしくは死刑の執行停止を実現することが要請された。

日弁連でも1997年11月に「日本における死刑に直面する者に対する権利保障の状態は、国際人権(自由権)規約及び国連決議等に違反する違法状態にある。」との理事会決議に基づき、死刑執行の度ごとに、「死刑存廃問題について国民的議論をすべきであり、また死刑に直面する者に対する権利保障の状態が不充分であり、国際人権(自由権)規約や国連決議等に違反しているおそれがあるので、死刑執行は差し控えるべきである」旨の会長声明・談話等を発表し、死刑執行停止法の提案や死刑制度の存廃に関する国民的議論の定期や死刑制度に関する全般的な再検討を検討しているところである。

死刑制度問題については、今こそ国民的議論をなし、かつ制度全般を見直し再検討を行うべきであり、このような時期に再び死刑の執行がなされたことは誠に遺憾であり、今後は死刑の執行を差し控えるよう改めて強く求めるものである。

以上

2002年(平成14年)9月25日
埼玉弁護士会会長  柳 重雄

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