2003.07.28

イラク特別措置法制定に抗議しその廃止を求める会長声明

本年7月26日、「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法」(以下「イラク特別措置法」という)が参議院本会議で、与党3党などの賛成多数により可決成立するに至った。当会は、去る6月25日、同法案が日本国憲法に反するものとして廃案を求める声明を発表したが、改めて、本法制定に抗議しその廃止を求める。

このイラク特別措置法は、米英軍主導の多国籍軍が行う「イラク国内における安全及び安定を回復する活動を支援する」ために、自衛隊をイラク本土に派遣することに途を開くものである。

しかしながら、本年5月1日のブッシュ米国大統領による「戦闘終結宣言」の後もなお、米軍等はサダム・フセイン氏等に対する「掃討活動」を続け、他方で「反米勢力」による米軍に対する攻撃も繰り返されるなど、イラクはいまだに「全土が戦闘状態」にある。加えて、米軍によりフセイン氏の子息らが殺害されたと報道された以降、かかる攻撃がさらに激化する様相を呈している。このような状況にあるイラク本土に武器を携行した自衛隊員を派遣し、米軍等の支援活動に従事させることは、自衛隊を米軍等の「掃討活動」に参加させることになるものと言わざるを得ず、これが、徹底した「不戦平和」主義をとる日本国憲法(平和憲法)に反することは多言を要しない。

のみならず、イラク国内の反米勢力により、自衛隊員が死傷する事態さえも十分に予想され、そのような場合、必然的に、自衛隊員がイラク国民等に対して武力行使に及ぶ事態ともなり得るのであって、このイラク特別措置法は、国際紛争を解決する手段として武力による威嚇又は武力の行使を禁じた平和憲法に根本的に違背する立法といわざるを得ないのである。

このように、平和憲法との関係で重大な問題・疑義を孕み、また国民の間でも意見が大きく分かれるにもかかわらず、政府・与党3党は、十分な審議を経ないまま、このイラク特別措置法を可決成立させたものであって、これは、まさに立憲主義に悖る事態と強く非難せざるを得ない。

私たち日本国民は、先の大戦についての深い反省に立って、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認」した(平和憲法前文)のであり、このことは、今特に、イラクの人々、とりわけ、その多くの子どもたちのためにこそ不可欠なものとして想起されなければならない。 そして、日本国政府及び国会は、イラクの人々のために、軍事部門によらない真の和平構築のための支援活動をこそ、早急に策定し具体化すべきである。

以上より、当会は、このたびのイラク特別措置法の制定に厳重に抗議するとともに、その廃止を強く求めるものである。

以上

2003年(平成15年)7月28日
埼玉弁護士会会長  難波 幸一

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