2004.06.15

有事法制関連7法案・3条約承認案件の成立に対する会長声明

本日、参議院本会議において、「国民保護法案」など有事法制関連7法案・3条約承認案件が可決された。これによって、我が国の基本的な有事法制の完成が図られたことになる。

当会は、一昨年4月、「武力攻撃事態対処法」等有事法制3法案が国会に提出されてから、同年5月の定時総会において同法案が憲法の根本規範である平和主義に抵触する危険があり、人権保障原理や国家の民主的な統治構造を大きく変質させる危険性があることなどを指摘し、反対決議を上げるなど、同法案に一貫して反対し、その廃案を求めてきた。

また、当会は本年3月に国会に上程された、「国民保護法案」など有事法制7法案・3条約承認案件に対しても、国民主権、基本的人権の保障、平和主義の観点から検討を行ってきた。すなわち、「国民保護法案」は、平時から政府・自治体・公共機関はもとより、国民にも有事への備えの協力を求め、かつ、有事における国民の統制と動員を法制化するもので憲法上も問題が多いこと、また「米軍支援・自衛隊活動に関する法案・条約承認案件」も、憲法が禁止する集団的自衛権の行使や、交戦権の行使を可能とする措置を内容とし、市民の生活や権利に対する幅広い制約を及ぼす危険性を有するものであることなどが明らかになっている。

このように有事法制関連7法案及び3条約承認案件は、いずれも、将来の国民生活、人権保障、統治機構を大きく変容させる可能性を秘めたものであり、広く国民的議論を行う必要があった。しかるに、これまでの国会審議において、十分な論点整理が行われ、法案の必要性や問題性が国民の前に明らかにされたとは到底言いえない。当会は、本年5月22日の定時総会決議において、これらの法案等について慎重かつ徹底的な審議を行うことを求め、拙速に審議・採決することに強く反対の意思を表明してきたが、参議院においても徹底した審議が尽くされないまま可決されたことは、誠に遺憾である。

有事法制は、一般に「有事」のときのみ作用するものではなく、「平時」においても国民の権利自由を規制する危険性を有するものである。当会は、最大の人権侵害である戦争に反対すると共に、平時においても有事法制の名の下に憲法が保障する人権が規制され、国民主権がないがしろにされることのないよう、有事法制のあり方や運用について、憲法の視点から今後も引き続き厳しく検証していく決意である。

以上

2004年6月15日
埼玉弁護士会会長  中山 福二

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