2004.07.21

死刑執行の停止についての要請

2004年7月21日

法務大臣  野沢 太三 殿

埼玉弁護士会会長  中山 福二

1 要請の趣旨

死刑確定者に対し、死刑を執行されないよう要請する。

2 要請の理由

  1. わが国では、4つの死刑確定事件(免田・財田川・松山・島田各事件)について再審無罪判決が確定し、死刑判決にも誤判が存在したことが明らかとなっているが、このような誤判を生じるに至った制度上、運用上の問題点について、抜本的な改善は図られておらず、誤判の危険性が不可避なままである。
    また、死刑と無期の量刑につき、裁判所によって判断の分かれる事例が相次いで出され、死刑についての明確な基準が存在しないことも明らかとなっている。
    さらに、死刑確定者は、国際人権(自由権)規約、国連決議に違反した違法状態におかれており、面会・通信の制限は過酷で、死刑確定者の再審請求、恩赦出願をはじめとする権利行使の大きな妨げとなっており、制度の抜本的な改善が必要である。
  2. また、1989年に国連で死刑廃止条約が採択されたが、1990年当時の死刑存置国が96か国、死刑廃止国が80か国であったのに対し、2004年5月現在では、死刑存置国78か国、死刑廃止国117か国となっており、死刑廃止が国際的な潮流となっていることは明らかである。
    他方、日本においては、世論調査では、死刑存置支持が相当多数をしめると報道されている。しかし、死刑制度の問題点についての情報は開示されておらず、世論調査の方法自体にも問題があり、必ずしも大多数の国民が将来にわたり死刑存置の意見であるとは言えない。
  3. このような国際的な潮流と国内的な世論の乖離を踏まえた上で、日本においても、死刑制度を存置するか廃止するかについて、早急に広範な国民的な議論を行う必要がある。日本弁護士連合会では、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし、また死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)の制定を提唱している。
  4. 当会では、本年4月28日に、日本弁護士連合会第47回人権擁護大会プレシンポジウムとして「徹底討論・死刑の存廃」を開催した。同シンポジウムでは、死刑の存置論、廃止論の双方から、充実した議論が行われたが、同時に、現行の刑事裁判制度あるいはその運用に、前述の通りの大きな問題があることも、明らかになった。

これらの点をふまえて、当会としては、死刑の執行を一時停止されるように求めるものである。

以上

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