2007.01.29

死刑執行に関する会長声明

2006年12月25日、東京拘置所において2名、大阪拘置所において1名、広島拘置所において1名の死刑確定者に対して刑の執行がなされた。
死刑については、1989年12月の国連総会で死刑廃止条約が採択され、国連人権委員会は1997年4月以降、毎年、日本などの死刑存置国に対し、死刑廃止に向けて死刑の執行を停止することなどを求めている。欧州評議会は、2001年6月、日本とアメリカに対し死刑執行の一時停止を行い、早急に死刑廃止に必要な段階的措置をとるよう促す旨の決議を採択している。
日本においては、死刑に直面する者に対する権利保障は極めて不十分な状態にあり、また、1980年代の4つの死刑再審無罪事件判決などにかかわらず、誤判防止のため制度改革は不十分な状態にある。また政府による極端な密行主義のもと、死刑に関する情報はほとんど明らかにされていない状態にもある。
日弁連は、2002年11月「死刑制度問題に関する提言」を発表し、死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑確定者に対する刑の執行を停止する旨の時限立法の制定を提唱した。また、2004年10月開催された第47回人権擁護大会において「死刑執行停止法の制定、死刑制度に関する情報の公開及び死刑制度調査会の設置を求める決議」を採択し、死刑の執行停止を求めている。
2年後には裁判員制度が開始され、裁判員としての国民が被告人を死刑に処するか否かの判断に直面することになるのであるから、今後、死刑制度について広範な市民的議論を尽くすとともに、制度全般を見直し再検討をなすべきであり、このような時期に4名もの死刑の執行がなされたことは誠に遺憾である。当埼玉弁護士会は、政府に対し、広範な市民的議論が尽くされるまでの間、死刑の執行を停止するよう改めて強く求めるものである。

2007年(平成19年)1月29日
埼玉弁護士会会長  蔭山 好信

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