2007.05.16

死刑執行に関する会長声明

平成19年4月27日、大阪拘置所において1名、東京拘置所において1名、福岡拘置所において1名の各死刑確定者に対し、死刑が執行された。
死刑については、1989年12月の国連総会で死刑廃止条約が採択され、国連人権委員会は1997年4月以降、毎年、日本などの死刑存置国に対し、死刑廃止に向けて死刑の執行を停止することなどを求めている。また、欧州評議会は、2001年6月、日本とアメリカに対し、死刑執行の一時停止と死刑制度を廃止するように促す旨の決議を採択した。
また、アジアにおいても、例えばフィリピンでは、既に死刑制度は廃止され、また制度自体は存置されている韓国でも、1998年以降、事実上死刑執行が停止されており、2005年2月には死刑廃止法案が国会に提出されている。
我が国では、近時、重罰化の傾向がすすみ、死刑判決が増加しており、裁判を経た未執行の死刑確定囚が今年に入って100名を超え、昨年12月に続く死刑の執行が早期に行われるのではないかと危惧されていたところであるが、そのような危惧の中で今回の執行は行われたものである。
一方、我が国においては、政府による極端な密行主義のもと、死刑に関する情報はほとんど明らかにされておらず、死刑制度に関する国民的議論を行う前提を欠く状況にある。今回の死刑執行についても、いかなる手続、経緯で被執行者が選択されたのかも判然としておらず、改めて死刑制度についての情報の開示を強く求めるものである。
死刑という究極の刑罰が、国民の間で許容されているのか否かについて、この問題に関心を持つ人々の間の議論にとどまらず、広く国民的論議がなされることが望まれる。
死刑問題について議論が進められようとしている中、再び3件の死刑が執行されたことは誠に遺憾である。
当会は、政府に対し、今後、国民的議論が尽くされるまでの間、死刑の執行を差し控えると共に、死刑制度の存廃についての国民的議論を広める方策を講ずるよう求める。

以上

2007年(平成19年)5月16日
埼玉弁護士会 会長  小川 修

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