2007.05.18

憲法改正手続法案の成立にあたっての声明

  1. 本年5月14日、参議院本会議において「日本国憲法の改正手続きに関する法律案」(以下、「法案」という)の採決がなされた。
    しかし、参議院での審議は本年4月16日から始まったばかりであるだけでなく、参考人質疑や地方公聴会は実施直前に日程が設定され、中央公聴会は開催されないまま採決に至っている。その審議過程だけを見ても、憲法改正手続きという重要法案の審議としては、拙速に過ぎ、慎重な審議がなされたとは到底いえない。
  2. 当会は、かねてより、法案には、憲法の基本原理である国民主権の観点からみて是認 しえない問題点があることを指摘してきた。
    憲法改正手続きは国民主権の具体化であるから、主権を有する国民の意思が適正に反映されなければならならい。また、そのために、国民投票の際には、国民に改憲の是非についての情報が十分に提供され、広範な議論がなされることが不可欠である。
    ところが、成立した法案は、?最低投票率の定めをおいていないため、投票率が40%程度であれば、投票権者の20%台の賛成で憲法が改正されてしまうことになること、
    1. 国会での発議から国民投票までの期間は、60日以後180日以内とされ、憲法改正を国民的に議論する期間としては短かすぎること、
    2. 公務員・教育者の国民投票運動に関しては、広範な制限を定めるものとなっており、こうした規制が国民の意見表明に対して重大な萎縮効果をもたらすことになること、
    3. テレビ、ラジオなどの有料広告に対しては、適切な規制が講じられておらず、マスメディアが資金力のある勢力に独占され、国民の適切な判断を損ねることにもなりかねないことなど、国民主権に関わる多くの問題を抱えたままである。
      このことは、法案成立にあたって、最低投票率制度の意義・是非について検討すること、公務員・教育者について禁止される行為と許容される行為を明確化することなどを含む18項目に及ぶ附帯決議がなされたことからも明らかである。
  3. 憲法改正手続法の国民投票に関する規定の施行は公布から3年後とされている。当会は、上記の問題点を払拭するため、今後3年間に、附帯決議がなされた事項を含めて、憲法改正手続きにおいて国民の意思を十分反映させるための法律の抜本的な見直しがなされることを求めるものである 。

以上

2007年(平成19年)5月18日
埼玉弁護士会 会長  小川 修

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