2008.01.24

非司法競売手続の導入に反対する会長声明

  1. 今、法務省は、裁判所が関与しない不動産競売手続(以下、「非司法競売手続」という)の導入を検討しており、関係団体への意見聴取も最終段階に来ている。
  2. しかしながら、現状の競売手続は、裁判所をはじめとする関係者の努力により、申立から売却実施処分までに要する期間は約4分の3が約6ヶ月以内に短縮され、また売却率は、全国では80%を超え、東京地裁では99%にも達しており、あえて非司法競売手続を創設する立法事実は見あたらない。
  3. ところで、法務省が検討している非司法競売手続は、A案からD案まであり、その内容が固まっているものではないが、裁判所の関与が全くないか、関与があっても制限的なものとされている。しかも現況調査報告書・評価書・物件明細書のいわゆる三点セットの具備が予定されていない案があり、オークションの主宰者は実行抵当権者ないしは誰でもよいものとし、配当・清算手続はオークションの主宰者や実行抵当権者が行うとする等を内容とするものである。
  4. しかし、現況調査報告書・評価書・物件明細書のいわゆる三点セットは買受を検討する者に対し重要な情報を提供する書面であり、買受人の利益保護には欠かせないものである。また、最低価格を設けない競売は、落札額の低下に結びつきやすく、それはとりもなおさず債務者の弁済額の減少となり、債務者やその保証人の利益を害する虞がある。
    さらに、裁判所が関与しない競売手続においては、暴力団をはじめとする反社会的勢力がその手続に関与して、不当な利益を獲得することが容易に想像できる。近時、暴力団等の反社会的勢力が、通常の企業等の姿を装って株式取引や企業買収等に進出していることは夙に指摘されているところであり、法律によって暴力団等の関与を禁止する条項を設けても実効性はほとんどない。
  5. 以上のとおり、非司法競売手続には多くの問題点がある。よって、非司法競売手続の導入に強く反対する 。

以上

2008年(平成20年)1月24日
埼玉弁護士会 会長  小川 修

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