2008.09.24

死刑執行に対する会長声明

  1. 本年9月11日、大阪拘置所にて2人、東京拘置所にて1人、計3人の死刑確定者に対する死刑が執行された。
    鳩山前法相は、昨年12月に3人、本年2月から6月にかけてそれぞれ3人、4人、3人と合計13人もの死刑を執行させ、これは歴代法相の在任中における最多の数であったが、今回の執行により同様の事態が継続されることが示された。
    当会は、これまで、死刑が執行されるたびに、死刑制度全般に関する情報を十分に公開することを前提として、少なくとも、死刑に直面する人々の権利保障状況等の改善がはかられ、死刑制度の存廃について国民的議論が尽くされるまで、一層の慎重を期して死刑の執行を行わないことなどを求めてきたところであり、今回の執行について誠に遺憾といわざるを得ない。
  2. 国連総会は、1989年12月、「自由権規約」第二選択議定書(いわゆる死刑廃止条約)を採択した。この翌年1990年当時は死刑廃止国(80か国)を死刑存置国(96か国)が上回っていたが、その後死刑廃止国が増加し、現在では事実上の廃止国33か国を含め死刑廃止国は135か国に上り、死刑存置国62か国の倍以上である。死刑制度の廃止は、国際的な潮流となっていることが明らかである。
    また、国連人権委員会(現在は国連人権理事会)は、1997年4月以降、毎年採択してきた「死刑廃止に関する決議」の中で、死刑存置国に対し「死刑に直面するものに対する権利保障を遵守するとともに、死刑の完全な廃止を視野に入れ、死刑執行の停止を考慮するよう求める」との呼びかけを行っている。併せて規約人権委員会は、1993年11月及び1998年11月の2回にわたり、日本政府に対して死刑廃止へ向けての措置を取ること及び死刑確定者の処遇を改善することについて勧告している。更に、国連拷問禁止委員会は、2007年5月、日本政府報告書に対する最終見解において死刑の執行を速やかに停止すべきこと等を勧告した。同年12月には、国連総会本会議において、すべての死刑存置国に対し死刑執行停止を求める決議が圧倒的多数で採決されているうえに、本年5月には、国連人権理事会第2回普遍的定期的審査において、日本の死刑執行継続に対する懸念が多数表明され、日本政府に対し死刑の執行停止が改めて勧告されているのである。
  3. このような中での今回の死刑執行に対し、当会は、改めて強い抗議の意を表明するとともに、法務大臣に対し、これ以上の死刑は断じて執行することなく、死刑制度に関する正確な情報を国民に提供したうえで、死刑制度の存廃について広く国民的議論を行うなど当会がこれまで再三にわたって表明してきた死刑制度に関する諸問題について真摯且つ早急に対応することを重ねて求める。
    特に、国民が死刑事件を含む刑事裁判に直接参加する裁判員制度が死刑制度の存廃を含めた抜本的検討もなく来年施行されることになれば、それは国民の負担の面からはもとより、被告人の人権擁護上到底看過できない問題となるのであり、少なくとも、裁判員制度施行までに立法等による死刑執行停止制度を設けるよう強く求めるものである。

以上

2008年(平成20年)9月24日
埼玉弁護士会 会長  海老原 夕美

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