2009.02.10

死刑執行に対する会長声明

本年1月29日、東京拘置所及び福岡拘置所において各1名、名古屋拘置所において2名、合計4名もの死刑確定者に対する執行がなされた。
そもそも,「死刑廃止条約」が1989年12月の国連総会で採択された以降、死刑廃止国が年々増加し、今日では死刑廃止こそが国際的潮流となっていることはいうまでもない。加えて、国連総会は、2008年12月18日、一昨年12月に続けて、すべての死刑存置国に対する死刑執行停止を求める決議を圧倒的多数で採択しているのである。
また、国連規約人権委員会は、同年10月30日、「自由権規約」に基づく日本政府提出の定期報告に関する審査を実施し、その総括所見において、日本政府に対し、世論の動向にかかわらず死刑廃止を前向きに検討すること、精神障害が疑われる人等への死刑執行に対しては人道的なアプローチをとること、死刑判決に対する必要的上訴制度を導入し、再審請求等による執行停止効を確実にすること等々、日本の死刑制度全般にわたる多くの勧告を発表したのである。
  しかるに、今回の死刑執行は、上記勧告発表の直前である同年10月28日の執行に続くものであり、しかも、そのうち2人は自ら控訴を取り下げ、さらに、そのうちの1人は公判段階から精神障害の疑いがあったというのであるから、いかに日本政府が上記勧告を真摯に受け入れようとしていないかが明らかであろう。のみならず、このように度重なる国連の勧告や要請を全く顧慮することのない一連の死刑執行の継続は、日本政府が、批准した諸人権条約を尊重する姿勢に乏しく、基本的人権を保障する意識の極めて低いことの証左といわねばならない。
当会は、これまでも繰り返し、政府に対し、死刑制度に関する十分な情報開示を前提として、死刑の存廃についての国民的議論が尽くされるまで死刑を執行しないよう強く求め続けてきたところであるから、この度の死刑執行については、まさに暴挙といわねばならず、極めて強く非難するほかない。
そして、改めて政府に対し、死刑問題が生命に対する権利というまさに根源的な人権の問題であることの再認識を強く求めるとともに、これ以上の死刑は絶対に執行することなく、直ちに、死刑存廃に関する国民的議論を喚起することを重ねて求める。
併せて、法定刑に死刑を含む事件が対象となる裁判員制度が施行されるまでに、少なくも死刑執行停止制度を立法化するよう強く求める。

以上

2009年(平成21年)2月10日
埼玉弁護士会会長  海老原 夕美

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