2013.02.28

死刑執行に対する会長声明

本年2月21日、東京、名古屋及び大阪の各拘置所において、それぞれ1名の死刑確定者に対する死刑が執行されたが、誠に遺憾であり厳重に抗議する。

今日、死刑制度の廃止は疑いようのない国際的趨勢である。1989年の国連総会における「死刑廃止条約」採択以降、死刑廃止国は増加の一途となり、最近では、死刑廃止国が140か国(事実上の廃止国を含む)であるのに対し、死刑存置国は58か国に過ぎない。また、国連総会においては、2009年12月に死刑執行の停止を求める決議が採択されたが、昨年12月20日にはさらに死刑廃止を視野に執行を停止することを求める決議が111か国もの賛成多数で採択されているのである。

そしてこの間、日本政府は、国連人権関係諸機関より、再三にわたり死刑廃止に向けての措置を採るべきことや死刑執行を停止すべき旨の勧告を受け続けている。特に、2008年10月の国連(自由権)規約人権委員会の総括所見における「世論調査の結果にかかわらず、締約国は、死刑廃止に向け前向きに検討し、必要に応じて国民に対し廃止が望ましいことを知らせるべき」旨の勧告については重要であり、尊重しなければならないはずである。しかるに、その後の日本政府にはこの勧告に従った動きが全くなく、国際協調主義を基調とする日本国憲法に照らし大変問題といわざるを得ない。

また、人権擁護活動に関する弁護士・弁護士会の総意を示すというべき日弁連人権擁護大会は、2011年(平成23年)10月7日、「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言」を採択した。この宣言を踏まえ、全国の弁護士・弁護士会を代表して日弁連は、本年2月12日、谷垣法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出した。そこでは、かかる全社会的議論のための方策として、偏りない人選による有識者会議を設置して死刑制度に関する世界情勢につき調査・検討等したうえ今後の同制度の在り方について結論を出すことやその間すべての死刑執行を停止すること等を求めていたものである。その矢先の今回の執行で到底容認することはできない。

よって、当会は、政府及び国会に対し、改めて、死刑廃止に向けた全社会的議論を尽くすこと及びそのための施策策定を求めるとともに、特に法務大臣にはかかる議論の集約が十分にできるまで死刑執行をしないよう強く求める。

以 上

2013(平成25)年2月28日
埼玉弁護士会会長  田島 義久

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